新生児のあれこれ 16 <沐浴(もくよく)>

新生児をお風呂に入れることを沐浴といいます。


私はこの沐浴が大好きです。


赤ちゃんが気持ち良さそうにお湯の中で手足を伸ばして、思わずカクンと居眠りしそうな様子でリラックスさせられると、「大成功!」とうれしくなります。


特に人生最初のお風呂に入れる時には、できるだけ怖がらせずにリラックスできるように沐浴をするための工夫をします。


まずはちゃんと言葉で説明すること。
「これから毎日、お風呂に入って体をきれいにしますからね」と。
これが果たして「効果」があるかはもちろんわかりません。
でも新生児も話しかけられると、ふと表情が変ってじっと相手のことを見ています。
初めてのことを体験する前には、オリエンテーションがあってもいいかなと勝手に思っています。


お湯に入れる時には、少しずつお湯に慣らせるようにゆっくりと入れること。
そして新生児の手がバタバタして驚いて泣いてしまわないようにそっと押さえて10ぐらい数を数えていると、体中の力が抜けて足が伸びていきます。
ここまではあわてずにゆっくりと。


新生児の力が抜けて体がまっすぐお湯の中で伸びたら、洗い始めます。
この時、大人の手の動きは新生児にすると粗雑な動きなので、少しでも手荒だとびっくりしてすぐに泣き出してしまいます。
そーっと手を優しく動かして、お湯を波立たせないような感じがポイントですね。


そして美容師さんに洗ってもらっている時の感じを思い出しながら髪の毛を洗います。
本職の美容師さんが沐浴をしているのを見ると、初めてのお母さんでもさすがという手つきです。
やはり新生児も人に髪の毛を洗ってもらっている時というのは気持ちが良いようで、それまでまだ少し緊張が残っていた児も急に力が抜けていきます。



ここまでくれば大丈夫。
「沐浴はわるいもんじゃないな」と赤ちゃんも体験、学習したことでしょう。


最後にお湯の中でふぁーっとあくびをしてくれたら、おしまい。


ついでに「水の中が大好きになって、将来は競泳の選手になってね」と心の中で声をかけているのは内緒。


初めてのお母さんたちにとっては、この沐浴はとても緊張する時間ですね。


沐浴の実習だけで、冷や汗と大汗をかいて皆さんぐったりしています。
退院後も、しばらくは沐浴の準備から片付けで1時間以上かかってくたくたになるようです。


産後の体への負担を考えると、沐浴はジジ・ババあるいはお父さんや他の手伝いの人の仕事でいいのではないかと思います。


それでもお母さんしかする人がいないのであれば、できるだけ手を抜けるような方法、家で簡単にできるような方法、そして体に負担がかからない方法を説明してあげることが大事ですね。



ベビーバスのようにお湯の量が多い中で、それこそスイミングのように浮かせながら入れるのは難易度が高いと思います。
少し大きめの洗面器(小さめのたらい)のように、赤ちゃんのおしりが底につくぐらいのお湯がよいかもしれません。



お湯の中で石鹸をつかうこともお母さんたちには怖いと感じることなので、先に石鹸で洗ってからお湯に入れるように順番を変えるだけでも入れやすく感じる方もいらっしゃるでしょう。


生後2〜3週間ごろから増える顔や頭の脂漏性湿疹、そしておむつかぶれに対応できるように「ここだけはポイント」という部分がしっかり洗えればよいので、あとは「今日うまく洗えなかった部分は明日きれいに、ね」ぐらいの適当さも必要かもしれません。


最初はお母さんたちも緊張していますが、何回かいれているうちに赤ちゃんの気持ちよさそうな表情に癒されることでしょう。


この沐浴についても、いろいろと考え方が変化しています。
しばらくそのあたりを考えてみようと思います。


<おまけ>


誰が入れても、どうやっても沐浴の時に激しくなかれることがあります。
あれはきっと腸蠕動が活発に始まったときのような印象です。
「ゲフッときそうだから、お風呂どころじゃないよ!」という感じ。
沐浴の上向きにされた姿勢は新生児にすれば危険だとマックスの啼き方になるようです。
こんな時には背中を洗うときの姿勢に変えて、背中側から洗ってあげればよいでしょう。
ただ、そういう激しいなき方も退院頃までには落ち着いていくようです。
沐浴のテクニックだけではなく、新生児にもいろいろと都合はあるのでしょうね。






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