母乳のあれこれ 7 <初産婦さんの「出すぎる」は分泌過多?>

経産婦さんの産後2〜3日ぐらいで強いおっぱいの張りは、だいたい1日で改善していきます。


ただ、赤ちゃんがまだ生理的黄疸がまだやや強めに続いている場合などは深い吸い方が少なく、お母さんの母乳の生産よりも消費の方が少なくなりやすいのか、数日ぐらい張りが続くこともあります。
そいういう場合には、搾りすぎない程度に搾乳で飲ませたり、軽くクーリングを続けて様子を見ているうちに、赤ちゃんも黄疸の時期を抜けると、ぐんぐんと飲むようになるので「張らなくても良く出る」時期に入るようです。



<初産婦さんの産後2〜3週間目までの変化>


初産婦さんの場合、このような「張らなくても出るようになる」時期がだいたい産後2〜3週間目までかかるような印象です。


2〜3週間すると、乳輪や乳頭も本当に柔らかくなります。


「乳腺の表面から奥まで、全ての腺が刺激によって母乳が分泌される状態」になると、一見、柔らかて張っていなくても、赤ちゃんの吸う刺激で乳輪の奥の方の腺からも射乳反射が起こってきます。


初産婦さんの産後2〜3週間目の経験として、「張らなくなった」「ポタポタと漏れなくなった」「母乳パットがいらなくなった」「それまで手で搾るとたくさん出たのに、搾乳量が減った」などがあります。


ちょうど赤ちゃんも急激な体重増加期に入っていますからよくぐずります。
補足していたミルク量も増えやすい時期です。
「張らなくなったから出なくなった」「足りないから赤ちゃんがぐずっている」と自信をなくしやすい時期です。


どちらかというと、赤ちゃんにしたら奥の乳腺まで少しの刺激で射乳反射が起きやすくなった状態であり、乳輪が柔らかければ表面から奥の乳腺まで100%活用しやすくなった良い時期に入ったのではないかと思います。


それまでは「刺激があればいつでも分泌を始めますよ!」とスタンバイしていた部分が多かったので搾ると出やすかったり、奥の方の乳腺から漏れてきていたのでしょう。
ところが、乳輪も柔らかくなれば周囲の筋肉が収縮して漏れにくくなってくるのだと思います。



一度、その体験をしている経産婦さんの場合、産後数日の間にはこの初産婦さんの2〜3週間目ぐらいの柔らかさに変化している感じです。



<初産婦さんで張りが強い場合>


初産婦さんのこの2〜3週間目の張り方も、個人差が大きいものです。
ほとんど苦痛になる張りもなく柔らかくなる方もいらっしゃれば、岩のようにガチガチになって、それこそ水を飲んだだけでも張りが強くなる方もいらっしゃいます。


そしてこの「ガチガチに張る」状態も、大きくわけて3つあるように感じています。


ひとつは、「経産婦さんの強い張り」のように、奥の方の乳腺まで刺激して射乳反射を起こせば、どんどんと柔らかくなっていくタイプです。


桶谷式マッサージなどに通われるきっかけになるひとつが、この退院直後ぐらいの強い張りによる苦痛と、張りが強いと乳輪も張って赤ちゃんもうまく飲みにくいことがあって悪循環が続いていることではないかと思います。


あるいは、ぽむぽむさんの「母乳育児で悩まなかった理由」で、産褥入院での母乳マッサージで改善した状況も、この初産婦さんの一タイプだったのではないかと思います。


おそらく「出すぎ」だったというよりも、奥の方の乳腺が十分にまだ刺激されていなかったために張りが強かったのではないかということと、「詰まり」をとったというよりも「それまで射乳反射を起こすほどの刺激がなかった部分」を刺激したことで分泌が始まり乳房全体に柔らかくなった・・・というところではないかと。


こういう場合は、経産婦さんの張りの時期と同じように、中途半端に搾ったり飲ませていると張りの強い時期が長引いてしまうことがあるようです。


もう一つのタイプでは、岩のようにガチガチの割には、私たちが刺激しても射乳反射がほとんど起こらず、ずっと張ったままのタイプがあります。
最初は熱感や痛みも強いのですが、ピークを越えると見た目のガチガチほどは本人は苦痛を感じなくなります。


こういうおっぱいの場合、赤ちゃんがまだ黄疸が続いたり、くちゅくちゅの浅い吸い方が多い印象です。
2〜3週間ぐらいで、急に赤ちゃんの飲み方が変わると、不思議とフワーッと柔らかくなっていきます。



初産婦さんの張りの強さは、分泌量が多いというよりも「乳腺が表面だけしかまだ刺激されていない」ことが理由のような印象があります。



いずれににしても、「母乳分泌過多」と言われているものの多くが本当は分泌過多というわけではないのではないかと私は考えています。



さて初産婦さんの硬い強い張りの3つ目のタイプですが、これは頻度としては少ないもので、周産期関係者でも一生の間に何人遭遇するか・・・ぐらいかもしれません。
それについてはまた後日改めて書くことにします。




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