「母乳のあれこれ」 まとめ

新生児の出生直後からの変化やその行動についても、まだまだわかっていることはほんの少しであったり、大人側の思い込みが強い部分が多いのではないかと思います。


それと同様に「母乳分泌」に関しても、その全体像についてはよくわからないままです。


ちょうど私が助産師になった頃に、「生まれた直後から1日に最低7〜8回は吸わせる」「吸わせることで母乳を分泌させるホルモンが出る」ということが、私たちの「常識」になりました。


ところが、最初の2〜3日の間に、お母さんや赤ちゃんの理由でまったく乳房への刺激がなかった場合でも、3日目頃からちゃんと分泌が始まります。
あるいは、最初はほとんどミルクだったような場合でも、1〜2ヶ月を境に急に母乳をよく飲むようになることもしばしばあります。


あるいは最初はよくでていたのに、ある時期からぱったり飲まなくなる赤ちゃんもいます。


「それをしてもしなくても変わらない」


一旦、「常識」が定着してしまうと、そういう事実が見えないのかもしれません。


「出る」「出ない」の発想を超えないと、なかなかこの母乳に関する全体像は見えてこないのではないかと思います。


ところが母乳がいかに素晴らしいかということを「啓蒙する」ことが目的になると、こういう授乳のさまざまな母・児のパターンには関心が持たれずに、母乳は万能であるかのような話(野心的研究)やミルクに対する忌避感(フードファデイズム)が科学を装った話になりやすいものです。



あるいは私たち助産師のしていることも、日々授乳中のお母さんや赤ちゃんと接していて出てくる「観察」や「仮説」を、それを検証するシステムがないためにそのままアドバイスとして広まりやすい問題はあるのですが、中には本質を引き出せる見方もあるかもしれません。
ところが助産師の言っていることは「非科学的」「古い考え方」と、助産師の授乳支援全般を否定し一蹴してしまうのも、拙速ではないかと。


そんなこんなで、全体もわかっていないのに、なんだか変だなと思った「母乳」の話について考えてみました。
本当に、まだまだわからないことだらけですね。


1. 母乳分泌や乳房の変化は、まだまだわかっていないことが多い
2. 「妊娠中のお手入れ」はどのように変化してきたか
3. 皮膚を鍛えるから柔軟性へ
4. 「母乳が出すぎる」という状態と「乳房緊満」
5. 母乳が「出過ぎる」というのはどういうことか
6. 「乳腺が開通する」というのはどういうことか
7. 初産婦さんの「出過ぎる」は分泌過多?
8. 帝王切開と母乳分泌
9. 母乳のためにどれくらい水分が必要か
10. みつめのぼたもち・・・「母乳のために」
11. 助産師はどのように授乳中の栄養をまなんでいるか
12. 「母乳のための食事」が広まった時代
13. 「母乳のための食事」の流れ・・・1980年代から90年代
14. 乳腺炎予防のための「母乳によい食事」・・・1990年代以降
15. みつめのぼたもち「こわい」
16. 「乳腺の詰まり」とは何か
17. 乳腺炎に食事が関連しているのか
18. 「後乳」とは何か
19. ドロドロの母乳と後乳・・・どのように検証したのか
20. 「乳質」についての変遷
21. 「後乳」は乳質の仮説のひとつ
22. 血糖値の変化はどのように関係するのか
23. 母乳と食事への不安
24. 母乳とアレルギー
25. 母乳と「安全な食べ物」
26. 母乳と「和食」
27. 母乳とフードファデイズム
28. 「不必要なミルク」とは
29. 母乳とミルクの成長曲線
30. 「母乳で賢くなったり出世するのか」という研究
31. 何のための母乳なのか
32. 母乳推進の目的は何だったのか。どう変化したのか
33. 「母乳のメリット」探し
34. 途上国以外のお母さんがターゲットに変わっていった母乳推進
35. 「母乳を与えることは社会階級のはしごを登るチャンス」
36. 母乳推進のためにお買物券進呈
37. 初乳とは何か
38. 母乳量を計算する