哺乳瓶についてはまた不定期に記事が続きますが、「ミルクも『自律授乳』が基本といいつつ」で書いたように、「自律授乳」という言葉についてしばらく考えてみようと思います。
<「自律授乳」が使われるようになる直前の時代>
私が看護学生だった1970年代終わりから1980年代初めまでは、「自律授乳」という言葉はありませんでした。
産科施設での授乳というのは、3時間毎に授乳室にお母さんたちが行き、直接母乳を吸わせたあと規定量のミルクを足す、という規則授乳でした。
1980年代後半に、助産婦学校で使った教科書を読み返してもまだ「自律授乳」という表現はでてきません。
ただ、看護学生時代に学んだことに比べてだいぶ変化した部分がありました。
看護学校時代の教科書は手元にないので正確な比較はできないのですが、1980年代初めの頃は、出生後すぐに新生児室へ預かり「初回授乳は生後8時間から。最初に糖水を飲ませ、食道閉鎖などの異常がないことを確認する」という方法だったと記憶しています。
それが、授乳開始は「母子ともに異常がなければ、出生直後でよい」「授乳開始を生後8時間とか12時間など規定しているのもあるが、あまり根拠はない」と変化したのは、こちらの記事で紹介しました。
そしてミルクの補足量にも変化がありました。
看護学生時代には、直接授乳のあとに必ず「(生後日数+1)×10」mlのミルクを足していました。
生後1日なら20ml、生後2日は30mlという量が目安でした。
それが以下のように変化しています。
乳汁の生産が児の欲求に及ばない場合は5%のグルコースを与え、調乳は与えない。
直接母乳を吸わせた後に「足りない分はミルクではなく糖水を足す」という方法が、日本の産科施設に広がり始めたのが、1980年代半ば以降だったのでしょうか。
またミルクを補足する必要がある場合でも、量が以下のように減っています。
1回の哺乳量は「生後日数×10ml」が適当とされ、哺乳力の強い新生児の哺乳量は「生後日数+1×10ml」でもよい。
この背景には、1989年に出されたWHOの「母乳育児成功のための10か条」とそれを推進してきた団体の影響があることは上記、昨年10月12日の記事でも書きました。
教科書には「自律授乳」という言葉はまだ採用されていませんでいたが、産科施設ではすでに「自律授乳」という言葉が広がり始めていた。
それが1980年代終りの頃でした。