看護基礎教育の大学化 22  <看護職を育てるには4年は必要>

長々と看護基礎教育の大学化について書いてきました。


少しまとめてみると、私個人は看護職を育てるには今までの専門学校の3年間では少なくて4年間ぐらいは必要だと思っています。


臨床で必要な基礎知識の理解に3年、そして臨床での研修に1年、計4年です。


4年間で看護師と保健師という2つの資格取得あるいは、さらに助産師資格取得が可能なカリキュラムの現在の大学の4年間とは全く異なります。


<卒後教育を義務付ける>


その中で国家資格を得るための学校教育は、従来の3年間で十分ではないかと思います。
こちらの記事に書いたように、各科の看護手順が全国で統一されていくようなシステムができれば、複雑なことを教育しなくても、基本をきちんと教えることができるでしょう。



まずは3年間で国家資格を得て、1年間は全国の施設で同レベルの研修が受けて初めて看護職として認める。
そういう臨床での実践研修に重点を置くシステムがよいのではないかと思います。


国家資格をとって臨床にでた1年目の看護師は「研修中」という認識がされて、学生の実習とも違った責任を持ちながら一通りの看護技術を習得していく期間を確保する。


リスクマネージメントの視点から、学生の実習内容が制限されてきたことを考えると当然の方向ではないかと思います。


この20〜30年で急激に医療が高度化したことを考えると、そういう期間を経て初めて臨床で働き始めることができるというシステムが必要な時代になったのではないかと思います。
人の命に直接関わる仕事なのですから。


<新卒教育ではなく卒後研修の1年間を>


だいぶ卒後教育の重要性については議論されるようになってきました。
でも、やはりまだ、新卒看護師を看護スタッフの頭数の一人として確保することが目的の新卒教育としか受け止められていないように見えます。



総合病院は毎年、新卒の確保にどこも力を入れていることでしょう。
自分達で新人を育てようという意欲ももちろんありますが、退職者の補充として最も賃金の低い新人を確保している実情もあるはずです。


ですから毎年4月から数ヶ月は、通常業務に加えて新人を育てることで病棟スタッフが疲弊する時期です。
なんとか独り立ちさせなければと、教える側も教わる側も追い込まれていきやすいものです。


生命に直結する仕事であることの緊張に加えて、その早く仕事ができるようにならなければという雰囲気で離職を余儀なくされる新人あるいはスタッフも多いことは想像に難くないことです。


卒後1年目は「研修」と捉えて、看護スタッフの頭数には入れない。
全国で統一した到達目標をつくり、研修中は詰め込みにならないように基本的なことを習得できるようにする。
研修中は臨床で患者さんと実際に関わりながら考える時間をゆっくり持てるようにすることで、知識からより深い洞察力へと高めていけるようにする。


新人をスタッフの頭数にいれない、独り立ちさせるための詰め込み教育はしないとなれば、受け入れ側のスタッフももう少し心身のゆとりを持つことができることでしょう。


そしてその1年間が終わる時点で自分が進みたい分野が見えて、本当に働きたいと思う部署へ移動する。



大事なのは国家資格取得までの年数ではなく、国家資格をはさんだ何年間が現実に看護職を育てるために必要なのかという議論ではないかと思います。


「看護教育の大学化」が目的になってしまうと、本当に現場で必要なことも見えなくなってしまうし、さまざまな矛盾がでてきていても大学化を死守するために次々と矛盾が重ねられることになってしまうのではないかと心配しています。




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