アドバンス助産師とは 2 <認証制度の目的は何か>

「アドバンス助産師」と聞いて、まず思い浮かんだのが「助産師と高学歴化」の記事に書いた「上級助産師」でした。


私が助産師になった80年代終わりは、まだ専門学校か短大専攻科に進むしか助産師への道はありませんでした。その後、急速に看護教育の大学化が進み、さらに大学院で助産師の国家資格をとる人も出始めました。


でも臨床に出れば、大学院卒も専門学校卒も同じように一から分娩介助や妊産婦・新生児のケアを経験していくしかありません。
そこで資格の差別化が必要になってくるのではと思い、以下のように書きました。

「正看護師」に対して上級(adovance)看護師というアメリカのシステムに似た、助産師に対して「上級助産師」のような新たな差別化した資格をその先に描いているのではないかと推測しています。

(明治時代からの悲願である)「助産医」は現実的に無理だから、「上級助産師」に処方権・会陰切開縫合術、その他の検査オーダーなどの裁量権を持たせて医師から独立した助産を行うための資格というところでしょうか。


まさかこの記事を書いてわずか2〜3年後には「アドバンス助産師」という言葉が本当に出てくるとは思いませんでした。
「アドバンス助産師」と聞いて思い浮かんだのは助産医を目指す動きであり、「アドバンス」と認証することは、もうひとつの別な助産師を生み出すかのように感じました。


<認証制度の目的は何か>



アドバンス助産師認証制度の第三者機関である日本助産評価機構のホームページに「制度の目的」が以下のように書かれています。

クリニカルラダー認証制度とは、助産実践能力が一定の水準に達していることを審査し認証する制度であり、助産実践能力が一定の水準、つまり助産実践能力習熟段階クリニカルラダーレベル3*に達していることを評価する仕組みです。
*はローマ数字

具体的には助産業務に従事しているなかで、社会の要請に応じた能力に対する経験と必要な研修などを受講していることや助産に関する知識技術がブラッシュアップできているかなどを確認します。

その目的は、以下の3つが挙げられます。
第1に、妊産褥婦や新生児に対して良質で安全な助産とケアを提供できることです。
第2に、この制度により、助産師が継続的に自己啓発を行い、専門的能力を高める機会になります。これにより助産師自身も、実践能力を自覚することで、より明確な目標をもつことにつながります。
第3に、社会や組織が助産師の実践能力を客観視できることにあります。


たしかに卒業時にはほとんど同じレベルであった助産師も、勤務先や自身の人生の変化によって数年ぐらいでもかなり実践能力には差が出ます。


おおよその経験段階の目安(クリニカルラダー)があることは、現場でも助かることです。


ただ、それを認証する必要が本当にあるのでしょうか?


助産師外来や院内助産という思想的な目標が伴っていることは、もはや客観的なラダーとは言えないように思います。


6月7日付けの日本経済新聞の中でも、以下のように書かれています。

助産師外来や院内助産を普及させるには助産師一人ひとりの能力向上が欠かせない。ただこれまでは能力をはかる物差しがなかった。このため日本看護協会日本助産師会(東京・台東)など5団体は8月から、助産師の実力を客観的に評価し、認証する制度を始める。


そう、これがこの認証制度の目的であることは、推進している方々が一番わかっていることでしょう。


ひとつの専門職の資格を分けることで階層化ができ、それを再び統合させることの大変さは、戦後から続く看護師(国家資格)・准看護師都道府県資格)の問題をみてもわかります。


たとえ民間組織の認証制度といえども、それがあることが助産師の実践能力を認めるかのようなイメージがあれば、現場の助産師はあわてて取得しようとすることでしょう。


本当に今、認証制度を拙速に始める必要があるのでしょうか。





「アドバンス助産師とは」まとめはこちら

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「看護師と准看護師の教育制度」
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