前回の記事で書いたように、看護大学で看護師資格にくわえて保健師課程も必須としたことで、保健師の資格を持つ看護職が急増しました。
それに対して、新たな助産師資格取得者数は微増でとどまっています。
たとえば平成26年の国家試験合格発表を見ると、保健師14,970人、助産師2,015人、看護師52.900人となっています。
これは、助産師の国家試験受験資格に分娩介助10例程度の経験が規定されているためで、学生の実習場所を確保することができないことが理由といえるでしょう。
<国家試験の回数>
ところで平成26年の看護職の国家試験ですが、正式な名称は「第100回保健師国家試験、第97回助産師国家試験、第103回看護師国家試験」のようです。
1948(昭和23)年に保健婦助産婦看護婦法ができてから始った国家試験ですから、年1回であれば、今年は第66回になるはずです。
ある時期までは年に2回、国家試験が行われていたためにこのような回数になっているのだと思います。
検索してみたのですが、いつまで年に2回実施されていたのか正確なことはわかりませんでした。
ただ、私が看護学校に入学した年に、3月の国家試験に不合格だったため配属されるはずだった病棟で看護助手的な仕事をしたのちに、秋の国家試験で看護婦になった方がいた記憶があります。
でも私の卒業時には国家試験は年に1回になっていたので、1980年ごろまでは看護婦国家試験は年2回だったのかもしれません。
看護婦の国家試験が年2回行われていたのは不合格者の救済的な措置という面があるのかもしれませんが、保健師と助産師の場合にはまた別の意味があります。
私が助産婦学校に入学した1980年代終り頃は、すでに保健師学校も助産師学校も1年間の課程でした。
ところが私より少し上の年代の方たちの中には、1年間で保健師・助産師の両方の資格を取得できる学校を卒業されている方々がいらっしゃいます。
いつ頃、保健師・助産師の教育期間は決められ、どのように変化してきたのでしょうか?
日本看護協会の「第2部 保助看法の改正経緯」(2009年)が参考になります。
「受験資格」(p.62)には以下のように書かれています。
昭和25年、保健婦、助産婦の教育は教育内容からみて6ヶ月内外の無駄が生じていること、または教育期間が長すぎるという意見が出され、昭和26年(1951)に教育期間を1年から6月とする改正が行われた。
そしてp.63には58年ぶりに受験資格が改正されたことが書かれています。
平成21年(2009)法律第78号で、第19条と20条の一号に書かれている修業年限を6月以上から1年以上に延長する改正が行われた。
この背景には、少子高齢化が進展し良質な看護の提供を国民が求めており、専門性のより高い保健師、助産師の育成が必要であること、そして実質的には既に1年間の教育を行っている実態があることから、このような改正が行われている。
つまり、1980年代から90年代にかけて保健師と助産師教育は、法律で定められている6ヶ月ではなく、すでに1年間の教育内容へと引き上げられていました。
その教育レベルを維持しながら、大学で看護師・保健師・助産師を取得しようとすれば計5年間は必要になるはずです。
ところが大学化のための「統合教育」という名目で、実質半年へと内容を削られたのでした。
そして2009年の改正で、統合教育が成りたたなくなると「保健師は必修から選択」になったり、助産師養成課程を大学院で行おうとしたり、端からみていれば教育内容を薄めたりかさ増しして、とにかく看護教育の大学化ありきの方向にみえてしまいます。
本当に保健師や助産師になりたいと1年間の専門学校に進学した人たちにとっては、教育内容を半減しても国家試験を通れば同じ保健師、助産師になり、かつ「深い人間性、質の高い看護のための看護大学」卒という学歴優先のイメージで押されてしまえば、釈然としないものが残るのは当然といえるでしょう。
看護基礎教育の大学化の目的のために、保健師と助産師の教育レベルを実質下げた。
これは、後世、歴史的に見ればかなり暴挙とよばれるような内容になるのではないかと思っています。
「看護基礎教育の大学化」まとめはこちら。