産後のトラブルを考える 14 <さとえさんのお話を聞いてください>

出産が女性の体に大きく影響を与える事の一つに排泄のトラブルがあることを、「産後のトラブルを考える」というタイトルでこちらの記事から書き始め、少し間が空きましたが仙骨刺激療法についてまで13回の記事を書きました。


その間に実際に尿失禁や便失禁を抱えていらっしゃるあおばさんとさとえさんから、実際の生活での大変さをコメントで教えていただきました。ありがとうございます。


今回は、さとえさんのコメントをそのままご紹介しようと思います。


妊娠中に母児ともに亡くなられた方の話を書いた記事に、よせてくださったコメントです。

私は産後とても酷い失禁があり、終始垂れ流しの状態が数ヶ月続きました。いくつも泌尿器科でまわり、産後半年で手術を受け、現在は全くないわけではないのですが、かなり改善し、生活しやすいくなりました。
同時にお尻のゆるみにも気がつきました。便が我慢できず、下痢をすると漏れてしまいました。肛門科を受診しましたが第三度裂傷だったけれど肛門括約筋は縫合されており、外科的には治せないと言われ、現在もリハビリを含め通院中です。
私自身は産後から失禁で人生が変わってしまった、生まなければよかったのではないか、と泣きはらした毎日がたくさんあったのですが、なかなか授かる事ができず、諦めて生活していた時に妊娠がわかり、高齢初産で流産などのリスクもある中で無事に出産できた事実をどこかに置いてきてしまったのがわかったからです。
確かに辛いです。今でも失禁があると落ち込みます。でも、私が無事に出産し、子供が元気に育ってくれている事実が奇跡なんですよね。
辛くなったらこの記事を思い出します。

きっとさとえさんご自身が絶望の淵に立たされたような日々だからこそ、亡くなられたお母さんと赤ちゃんの話に、ご自身とお子さんが生きている事だけで奇跡と思う事ができたのでしょうか。
コメントを続けていただきました。

私も出産する前は、自分が失禁に悩むなんて思ってもみなかったので、出産当時の事を思い出すとあまりにも辛い日々だったため、精神的に不安定になってしまいます。
本当なら赤ちゃんが産まれて幸せいっぱいなはずだったのに、出産したせいで自分の排泄機能が壊れてしまったんだ、と毎日泣いて過ごしました。何より、失禁ばかりの母親を持ってしまった娘がかわいそうでたまりませんでした。泌尿器科や肛門科でも、産後の失禁に詳しい医療機関は少ないように思います。
産院に相談に行きましたが、笑われて終わりました。ショックでしたよ、笑われて。
失禁が恥ずかしくてなかなか医療機関にかからない方、または私のように相談に行っても相手にされない方もいらっしゃるかもしれません。
私は幸いエコー検査で骨盤底筋が切れていて、そのせいで尿道がゆるゆるで支えきれず、尿失禁していた事がわかったので、その日のうちに手術の日を決めましたが、そのようにしっかり検査していただける医療機関は少ないみたいです。
数は少ないかもしれませんが、前にコメントされていた方が便失禁があるようでしたし、出産でこのような障害を負ってしまう事もあるという事実を知っていただく機会になればと思います。
もっと研究がすすみ、産科の方々にきちんと理解していただくとともに、産科と泌尿器科や肛門科がうまく連携できるシステムができたらいいなとも思います。
本当はこんな事がないのが一番なんですけれどね・・・
尿失禁、便失禁の辛さはなかなか理解してもらえませんね。まして出産がきっかけなんて。
失禁があると、すごく自分を責めたりして、自分を嫌いになります。尿や便を我慢するという当たり前の事ができなくなってしまった情けない気持ち。これから先の不安。いろいろあります。

毎日の生活について、またコメントさせていただきます。しつこくて申し訳ないのですが、ずっと必死に心にとどめていたものが溢れてしまい、何度もコメントさせていただく事をお許しください。
尿失禁については、産後数ヶ月は垂れ流しでしたので介護用の厚くて大きなパッドを使用していました。娘の予防接種や通院があると、パッドをたくさん持って外出しました。また、抱っこ紐は腹圧がかかるため失禁が酷くなりました。なるべく使わないようにしました。今でも抱っこ紐のママを見ると羨ましく思いす。
手術をしてからは薄い尿漏れパッドをしています。ただ蒸れてしまうので衛生面で不安があり、家にいる時は使いません。漏れたら着替えます。
便失禁に関しては、液漏れで下着を汚してしまったり、排便後にジワジワと残っていた便が出てくる事があったので、やはりパッドなしでは生活できない状態でした。
固形便はトイレに走れば間に合う程度です。
現在は整腸剤などでだいぶ改善していますが、いつ便意がくるかわからないので、外出にかなり気を使います。特に電車やバス、混んでいる場所に行かなければならない時は不安が大きくなります。
友人とのランチなども不安であまり行けなくなりました。
洋服も、漏れてしまった時の事を考えて、薄い色や薄い素材は履きません。それから下痢をしてしまうと漏れてしまうので、少しでもお腹に不安がある時は厚いパッドを付けます。胃腸炎の時はトイレにこもるか、おムツをしています。
それから、失禁の恐怖から夫婦生活はまったくできなくなりました。
産後ずっと、こんな生活です。そしてこれからも変わる事はありません。閉経後は更に酷くなるのではという不安もあります。
いろいろ書かせていただきましたが、少しでも参考になれば幸いです。

さとえさん、本当にありがとうございます。
一行一行の文から、臨床の私たちが考えなければいけないことがたくさん思い浮かんでいます。
その点については、また考える時間をくださいね。
必ず、後日、記事にまとめたいと思います。


今回はさとえさんのコメントをそのままご紹介するのに留めたいと思います。読まれた方のそれぞれの思いがあることと思いますので。


ただ、抱っこ紐のところは読んで涙が出ました。
私も同じような状況の方から相談を受けた時に、尿取りパッドの利用や食事・整腸剤での排便コントロールなど、思いつく限りのことを説明しました。
自分ではアドバイスしたつもりになっていたのですが、肝心のお母さんの気持ちにまで思い至らなかったことに恥じ入っています。
そうですよね。抱っこ紐は使えないですよね。
お母さんにとって赤ちゃんを抱っこできない辛さを想像できなかった私です。
きっとその方には、歯がゆいアドバイスばっかりだっただろうと思います。


さとえさん、気づかせてくださって本当にありがとうございます。
どうぞ、また小さな日常のことでも何でも書き込んでくださいね。





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