ちょっとしたいい話やアドバイスのかたちで思い込みや妄想が助産師の中に広がりやすく、またお母さん達へ勧めやすいのは、その助産師個人の問題というよりはこちらに書いたように助産師を育てるシステムの問題が一番大きいのではないかと考えています。
助産師という国家資格を持ったあとに、その知識と技術をどのようにその医療の水準に合わせていくかというシステムの問題でもあります。
自己流の解釈や思い込み、あるいは医療とはまったく異なる考え方の代替療法を全面に出しても、「助産師」と名乗れてしまうこと。
そしてそのような助産師を生み出さないような資格取得後のフォロー体制がないことがシステムの問題といえるでしょう。
そしてどうしてシステムができないか、それは助産師の世界にある信念が根強いからだと思います。
こちらで、紹介した日本看護協会の「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)活用ガイド」については、「客観的なガイドのようであってもそこには『産科医から独立した助産師を目指す』信念が織り込まれているのかもしれません」と書きました。
これは私の想像の話ではなく、活用ガイドの「助産師とは」(p.7)に書かれています。
助産師には医療法に規定される医療機関である助産所を開業する権利が保証されており、正常妊娠・正常分娩については、医師との連携のもと助産師の責任と判断で独自に取り扱うことができる。
医師が不在であったとしても、その専門性を発揮することが可能な職域である。
たとえそれまで所属していた産科病棟や外来が閉鎖されたとしても、施設の周辺に居住する妊産褥婦および新生児などの健康とケアに対する責任が助産師にあることを再認識することでおのずと自らのとるべき行動が見えてくるのではなだろうか。
そもそも「おわってみないと正常だったかどうかはわからないお産」という結果論を、「正常分娩」が先にわかるかのように受け止めることが思い込みであることは、「思い込みの『正常』」で書きました。
それが思い込みだと理解できない限り、助産師の権限を求めた壮大な妄想が広がっていきます。
そろそろそういう時代は止めてほしいものです。
そして地域で「周辺に居住する妊産褥婦および新生児などの健康とケアに対する責任」があるはずなのに、こちらのさとえさんのコメントにあるように、新生児訪問で助産師が効果が証明されてもいないことを勧めてしまうのも、またシステムの問題だといえるでしょう。
次回からはしばらく、助産師による新生児訪問について考えていきます。