1980年代あたりから海外旅行が一般的になって、「あの土地で食べた物をまた食べてみたい」とおもう熱情が「海を越えてやってきた野菜」で書いたように、1990年代頃から手軽に買えるようになった野菜や果物が増えたのかもしれません。
同じように、1980年代には現地でしか見ることができなかった植物が、最近では花屋さんの店頭に並ぶようになりました。
ブーゲンビリアもそのひとつです。
1980年代に2年間暮らした国では、どこでも庭先にこの花が植えられていました。
1年中いつも咲いていました。
当時、日本では見ることができませんでしたが、東南アジアの他の国やパキスタン、そしてアフリカの国々でも見つけた時には、切なくなるほど私にとっては熱帯の国で過ごした日々を一瞬にして思い起こさせる花でした。
そして90年代に時々その国を行き来した時に、この花を見つけると「帰って来た」と喜びも増すのでした。
90年代終わり頃でしょうか、日本の花屋さんでも鉢植えのブーゲンビリアを目にするようになったのは。
<日本では育つのか>
鉢植えを買ってみようかと何度か衝動に押されそうになりましたが、ポトスのような簡単な観葉植物でもだめにしてしまうほど植物を育てる能力が欠けているので、ぐっと気持ちを抑えています。
いえ、きっと夜勤とか不規則な生活だからうまく育たないのだと思いますが(言い訳)。
熱帯の花ですから、鉢植えといっても日本の気候に合うような品種改良があるのでしょうか?
買ってすぐにダメにしたら、もう植物を育てることに絶対的に自信喪失しそうなので慎重になっているところもあります。
日本で売られるようになってからも庭木としては見た記憶がないので、購入された人はやはり鉢植えのまま室内で育てているのでしょうか。
冒頭でリンクしたサイトの「ブーゲンビリアの育て方」には次のように書かれています。
寒さは凍らないぐらいなら耐えるので、庭植えは沖縄だけでなく、九州の暖地でも植えられているところがあります。
そうそう、沖縄に行った時もあちこちの庭先でブーゲンビリアを見て、とても懐かしく思いました。
庭植えの北限はどうやら九州あたりのようですね。
またこんなことも書かれています。
本来生息地では年中咲いている花なのですが、日本の夏は暑すぎる事と長日条件によることもあって、夏は咲き難くなるようです。
熱帯の花も、日本だと真夏の花ではなくなってしまうのですね。
植物を育てるというのは、本当に気が遠くなるような観察と研究の積み重ねですね。
<どうやって広がったのだろう>
wikipediaのブーゲンビリアの説明では、「原産地は中央アメリカ及び南アメリカの熱帯雨林」「1768年にブラジルで木を見つけたフランス人の探検家ブーガンヴィルに由来する」とあります。
20世紀半ばまで探検家と呼ばれる人たちが「未開の地」に出かけ、珍しい植物に心を動かされたり郷愁から、なんとか持ち帰ってみたいと試して広がって行ったものがたくさんあることでしょう。
日本も明治から第二次世界大戦後しばらくの間は、こちらの記事に書いたように海外のあちこちの国に出稼ぎに国民を送り出す側でした。
拓殖とか移民という名前で、農村などの過剰人口を調整することも目的のひとつだったようです。
私が一時住んでいた国には、その日本人による入植の歴史が残っている場所が多くありました。
そしてそのあと第二次世界大戦中は、同じ道を日本兵が通って行きました。
ブーゲンビリアは熱帯の国への郷愁だけではない思いが蘇ってくる人もいるのかもしれません。
そして植物には感情も記憶もないけれど、当時からの現地の人たちと日本人の関係を見続けて来た花であり、私には何かそれを言葉として伝えなければいけないものがあるのではないかという気持ちにさせる花なのです。