母乳育児という言葉を問い直す 9 <断乳と卒乳、そして乳離れの境界線>

当然過ぎるのですが、断乳も卒乳も母乳栄養に対して使うことが前提にある言葉です。


母乳授乳に関して必要から生まれた言葉なのですが、乳離れと同義語ぐらいの認識でした。


「母乳育児支援スタンダード」(NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会、医学書院、2007年)に「乳離れ」の言葉の定義の中に以下のような一文がありました。

日本語の「乳離れ」には、離乳食をはじめるという意味の「離乳の開始」(乳離れの開始)と、完全に母乳もしくは人工乳を飲まなくなる(「乳離れ完了」)の意味が含まれている。


「卒乳」は母乳栄養児に使われる言葉で、乳児用ミルクを飲まなくなっても「卒乳」とは表現しませんね。
でもこのラクテーション・コンサルタント協会のテキストでは、「乳離れ」となると母乳もミルクも含まれるニュアンスで使っている。


ちょっとこのあたりを考えた事がなかったので、おもしろいなと思いました。


<人工栄養の「卒乳」や「乳離れ」はあるのか?>


「乳離れ(ちばなれ)」について、goo辞書では「赤ん坊が成長して母乳を飲まなくなること」と説明されています。



この説明の通り、「乳離れ」というのは「母乳」が前提にあるのではないかと思います。


さらに「赤ん坊の成長」も生後半年ぐらいまでではなく、離乳食が完了する1歳前後を想定した言葉ではないかと思います。
たとえば、最初の2〜3月かは母乳とミルクだったけれど半年以内にミルクになっていった赤ちゃんに対しては、「乳離れ」とか「卒乳」という言葉は使われませんから。


あるいは哺乳瓶でミルクを飲んでいる時期は母乳と同じように吸啜(きゅうてつ)反射による授乳ですが、マグやカップからミルクを飲むようになり始める場合には、どの時点で卒乳というのでしょうか?


哺乳瓶からマグへ変わる時点でしょうか?
それとも、ミルクが乳児用ミルクから牛乳へと変わる時点でしょうか。



また「乳離れ」には、「お母さんが止めさせる」「赤ちゃん自身が止める」というように2人の主体があるのですが、そのどちらの意志によるのかが漠然とした言葉でもあります。
母乳の乳離れであれば、前者を「断乳」、後者を「卒乳」と表現しているのだと思います。


では、乳児期早期から母乳ではなくミルクだけを飲んでいる赤ちゃんにとって、「乳離れ」あるいは「卒乳」と同じような状況は何かと考えると、「おしゃぶりをやめさせるかどうか」ということかもしれません。


「卒乳」や「乳離れ」をおしゃぶりについての視点から考えると、「母乳かミルクか」あるいは「何歳まで母乳をのませるべき」ということとは違う見方ができるようになるのではないかと思います。




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