医療の末端で働いている私にとっては、厚生労働省の方針や方向性は身近であるようで案外よくわかっていない部分です。
というか、厚生労働省の構造とか、どのように政策が決められて行くのかなどほとんどわかっていません。
10年前の産科医療崩壊と言われた時期あたりから、医療関係のニュースを以前にも増して真剣に読むようになりましたが、時々、一体これは何をしたいのだろうというニュースを目にします。
3月15日の「人手不足で『施設の統合』検討 厚労省」(NHKニュース)もそのひとつでした。
厚生労働省は、地方などの福祉施設で今後、人手不足が深刻化し、存続が難しくなるケースも予想されるとして、介護施設や保育施設などを一つにまとめて運営できるよう規制を緩和することや、介護福祉士や保育士などの資格を統一することを検討する考えです。
厚生労働省は、▽介護職員が、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となる10年後の2025年に全国でおよそ33万人不足する一方、▽保育士は、2018年に全国でおよそ7万人足りなくなると推計されており、地方や山間地域の福祉施設で人手不足が深刻化し、存続が難しくなるケースも予想されるとしています。
こうした状況を受けて、厚生労働省は介護施設や保育施設、障碍者施設を一つにまとめて運営できるよう規制を緩和することや、将来的に介護士や保育士、准看護師などの資格を統一することを検討する考えです。
厚生労働省は、こうしたことが実現すれば、一人の職員で高齢者の介護と乳幼児の保育に当たる事ができるようになり、職員が足りなくても福祉施設の運営が可能になるとしており、近く省内に作業チームを設け、福祉施設の団体などからのヒアリングを始めることにしています。
まず、「介護施設や保育施設などをひとつにまとめて」と「将来的に介護士や保育士、准看護師などの資格を統一」の「など」という言葉にひっかかりました。ここに書かれていないものがあるのだろうか、と。
そしてこの「資格の統一」について、専門性が違うことももちろんですが、介護士や保育士は国家資格であるのに対して、准看護師は各都道府県の知事資格ですから、これを「統合する」というのはどういう意味だろうということがよくわかりませんでした。
これはNHKのニュース自体にも言葉が正確に伝わらない報道上の問題があるような気がします。
このニュースについて詳細を知りたいと思い、検索していましたが、ほとんどわかりませんでした。
いつもは医療ニュースをm3.comで大まかに把握しているのですが、そのサイトではこのニュースさえとりあげられていませんでした。
<ケアの中のグレーゾン>
「人手不足で『施設の統合』検討 厚労省 感想ツイートのまとめ」の中に、「専門職から総合職にする」「保育・介護は、一般家庭でも行われている行為ですから、資格がなくても行えるようにして、資格を持った人は、指示・指導する立場にすれば、人材確保できます」と書かれたツイートを見かけました。
もしかしたら、そのあたりかもしれません。
その施設の職員全員に介護から保育までのオールマイティなケアを求めるということではなく、すでに国家資格や知事資格を持った人が、その専門性を超えて管理職的に介護と保育の統合施設に配置するというあたりでしょうか。
現在も、たとえば保育園にも看護師が雇用されていて、医療と保育のグレーゾン的な仕事をしていますし、介護施設でも看護師と介護福祉士の仕事は明確に線引きできない部分も多いのではないかと思います。
「看護と介護の『ケア』」あたりでその境界線について少し書きました。
たとえば保育園で働いている看護師さんは、病院での小児科看護からもう少し広く小児と関わりたいと思って保育園勤務を選択された方も多いのではないかと思います。
実は最近、私自身が認知症の父との経験から、介護にとても関心がでてきました。
あと数年ぐらいで助産師を辞めて、介護施設で働いてみようかなという思いが日に日に大きくなっています。
もちろん高齢者と保育、あるいは出産や医療機関でのケアにはそれぞれの専門性がありますから、簡単に仕事ができるようになるわけではありません。
反面、ケアの共通点があるからこそ、自由な行き来ができる部分も確かにあります。
ただ、このニュースを聞いて「現場感覚がない」「机上の空論」と感じたのは、経験は積んでいくものという視点があまりになさすぎるのではないかというところかもしれません。
資格を持っていても、新人から達人になるには時間が必要であるということが。
「ケアとは何か」まとめはこちら。