看護の本質
前回の記事で、厚生労働省の「人手不足で『施設の統合』検討」というニュースに感じたのは、資格を取得した後に長い時間をかけて形成される専門性への視点が弱いことでした。 では、ケアの専門職の専門性とは何でしょうか? 究極の目標は、「その人がして欲…
医療の末端で働いている私にとっては、厚生労働省の方針や方向性は身近であるようで案外よくわかっていない部分です。 というか、厚生労働省の構造とか、どのように政策が決められて行くのかなどほとんどわかっていません。 10年前の産科医療崩壊と言われた…
1990年代頃から、仕事の中で使う事をためらうようになった言葉があります。 それは「指導」という言葉です。 医療現場、特に看護には「指導」とつく用語がたくさんあります。 「退院指導」はどの科でもありますし、産科でいえば「沐浴指導」「授乳指導」「栄…
親の介護を真正面から考えなければいけなくなったときに、上野千鶴子氏の「ケアの社会学 −当事者主権の福祉社会へ」(太田出版、2011年)に出会いました。 「ケアとは何か」。 看護ケアの現場で働いてきた中で、ずっと心の中にあった根本的な問いに答えれく…
こちらの記事で、20年ほど前に東京都がまだ新生児訪問指導員のための研修制度があった頃、その研修では「心構え」についても話があったことを書きました。 それよりさらに数年前、私が助産師学生だった時に「訪問の心構え」を恩師から教わった記憶がありま…
「介護」というのは比較的新しい言葉です。 介護も看護も、そしてもとは育児も「ケア」とひとくくりにされる言葉のようです。 以前は、ケアといえば看護職の言葉でした。 医師の治療(cure)に対して、看護のケア(care)というように。 でも十分な訳語がない…
母乳関連の話題はまだ続きますが、テクニック的なアドバイスやノウハウを書くことよりも、私はむしろなぜそういう「行き違いが起こりやすいのか」という視点から考えたいと思っています。 とりわけ赤ちゃんの世話が始まる入院中の数日間というのは、とても短…
昨日の記事で紹介した私の助産婦学生時代の教科書には、ラッチオン ポジショニングと同じ内容が、きちんと書かれています。 1980年代の教科書です。 g.授乳時の姿勢 乳児の小さいうちは、毛布やクッション、枕などを児の体の下にいれて高さを調節する。乳児…
昨日も書いたとおり、日本看護協会から出された「分娩施設における災害発生時の対応マニュアル作成ガイド」はあくまでもマニュアル作成のためのガイドなので、最低限の骨組みを示すものでしかありません。 それでも、その骨組み自体が現実に即していない内容…
「完全母乳」という言葉についてあれこれと考えたことを書いたものが、「完全母乳という言葉を問い直す」でした。 初めてのお母さんたちのスタートというのはおおよそ3パターンになることを昨日の記事で書きました。 さらに厳密に言えば、さまざまな理由から…
母乳育児相談に関しても、初産と経産では、相談頻度も内容も全く異なります。 こちらの記事に書いたように、経産婦さんの場合、母乳分泌も退院の頃には「初産の2〜3ヶ月目からのスタート」という感じで出始めますし、新生児の世話も経験があるので赤ちゃんも…
初めて出産される初産の方とお二人目以降の経産の方では、お産も母乳分泌の状況もそして赤ちゃんへの接し方も天と地ほどの差があることは初産と経産と初産と経産つづきで書きました。 初産では出産も医療介入が必要なことが多くなるし、授乳や赤ちゃんの世話…
こちらの記事で、自分なりに考えた「達人」のレベルに近い働き方ができるようになってきたことを書きましたが、それは経験量が増えたこともありますが、比較的ローリスク対象のクリニックで10年ほど継続して働いてきたこともあると思います。 今、私が周産期…
都内に新しくできた「とよくら産後ケアハウス」の<産後ケアハウスって何?>には以下のように書かれています。 昔から産後は十分な休養をとることとされていました。 「産後の肥立ち」「床上げ」といった言葉は妊娠・出産を機に大きく変化したからだを、ゆ…
2004年以降、分娩施設が次々に分娩取扱いを止めました。 あるいは分娩は受け入れるけれど、里帰り分娩の受け入れは中止する施設が出始めました。 こちらの記事で紹介させていただいた医師ブログの新しいブログサイト、「勤務医 開業つれづれ日記・2」では20…
こちらの記事で紹介した「助産雑誌」2010年4月号の特集の1記事、「産褥入院の現状と入院期短縮化の条件」の共著者である坂梨薫氏(横浜市立大学、母性看護)の研究結果報告書がネット上で公開されていました。 「子育て支援に向けた産後ケア施設の開設要件の…
残された産科施設で分娩を受け入れるためには早期に退院をしてもらう方法を取り入れるところが増え、それにともなって「産褥入院」という言葉が聞かれ始めたのは2000年代終わりの頃だったと記憶しています。 「助産雑誌」2010年4月号(医学書院)でも、「特…
前回の記事で取りあげた産後ケアセンターについて、引き続きしばらく考えてみようと思います。 <産褥入院・・・宿泊型の産後ケア> 「産後ケア」という言葉自体、まだ明確な定義を持ったものではないと私は認識しているのですが、その中で出産後に長期に宿…
「医療介入とは 10 <CTGの普及と助産婦の『自然なお産』の時間的なずれ」で、CTGがいつ頃からどのくらい普及したかについて書きました。 1980年代半ばから急速に普及しましたが、1993(平成3)年の時点では病院では92.6%に対し診療所ではまだ63.7%でした。…
前回の記事の最後に、「お産の陣痛の個人差をより正確に観察できるようにもっと技術を磨いていきたい」と書きました。 その「技術」という表現は、医療従事者であれば「看護技術」の略であることはわかると思います。 今回はその看護技術について考えてみよ…
私は、外科系と内科系の病棟で看護婦として勤務したあとに助産婦になりました。 病棟での急変の対応はそれなりに経験もしていた私でしたが、産科救急というのはまた違った怖さがあると感じながら助産婦学生時代には学びました。 産科救急の特殊性は、妊娠中…
6月16日の「完全母乳という言葉を問い直す 32 <再び「母親の英知」より>」にいただいたやみゃムトさんのコメントを読んで、ふと完全母乳を目的にした完全母子同室は現代のヨトギかもしれないと思いました。 そんなわけで、今日はちょっとお産の話から離れ…
お産が始まって陣痛を乗り越える分娩第1期には、昔から「産婦のとるべき体位、姿勢の原則はないので、産婦が最も安楽だという体位にまかせればよい」という認識が助産師にはあり、教育の中でもそのように教えられていたことを前回の記事で書きました。 その…
お産で入院した産婦さんにどのように具体的に対応するのか、二十数年前に学んだことを昨日に続けて振り返ってみようと思います。 日本看護協会出版会の「母子保健ノート2 助産学」(1987年)からの引用です。 ちなみに編者は青木康子氏、内山芳子氏、加藤尚…
「産婦の快適性」について、助産師はどのように教育されてきたのでしょうか? 私が二十数年前に助産婦学校で使った教科書、「母子保健ノート2 助産学」(日本看護協会出版会、1987年)を参考に振り返ってみようと思います。 とても基本的でよいことがたくさ…
分娩進行中に自由な姿勢をとれることが産婦さんの快適性を高める、という点に関しては反論は出てこないのではないかと思います。 今日は、分娩進行の中の分娩第1期の産婦さんの自由な姿勢と快適性について考えてみたいと思います。 <「自由な姿勢」の主張の…
アクティブ・バースやフリースタイル分娩について、医学的あるいは看護学・助産学的には統一した定義はまだなさそうです。 「医療介入とは 49 <アクティブ・バースとフリースタイル分娩>」で紹介したように、フリースタイル分娩では「産婦の身体や精神を抑…
いつの間にか「医療介入とは」で始まるタイトルが50近くになってしまいました。 ブログを訪れてくださる方も、「あれ?まだやっている」とタイトルを見ただけでお腹がいっぱいになられているかもしれないとひそかに心配しています。 「医療介入とは」は、…