父が入院している病院は、標高がやや高いところにあります。
そのためか春の訪れは今頃一斉に、いろいろな花が咲くことが特徴のようです。
高校生まで住んだ地域ですが、「特徴のようです」と書くぐらい、離れてみて初めてここの春はこんな感じだったのかと驚きました。
3月終わり頃からぼちぼちと梅や桃が咲き始めていたのですが、今週に入って暖かさとともに、梅、桃、桜、木蓮、コブシ、レンギョウ、ユキヤナギ、沈丁花、木イチゴと、本来は時期が少しずつずれるはずの花がそちらでは一斉に咲いていました。
庭では水仙、チューリップ、クロッカス、スノーフレーク、シバザクラ、ハナニラ、空き地には菜の花、たんぽぽ、ヒメオドリコソウなど、数えきれないほどの草花が色とりどりに咲いている風景は幻想的でした。
バス停から病院までの10分ほどの道を、下を向き、上を見上げ、まるで登校中に寄り道をしている小学生の気分で歩きました。
その中でも、思わず声をあげそうになったのがタチツボスミレの群生があちこちにあったことでした。
タチツボスミレは、野の花の中では5本の指に入るぐらい好きな花です。
今住んでいるところではたまに道ばたに見つけることがあるくらいですが、この花をみると子ども時代の寒冷地の春への待ち遠しい気持ちが思い出されるのです。
子どもの頃は、少し濃いめの紫色のタチツボスミレが多かったような記憶があるのですが、先日通りかかったところは薄紫の花が空き地に一面に咲いていました。
その10日前までは、そこはただ枯れ草が広がる空き地だったのですけれど、本当に魔法のようですね。
タチツボのツボは「壷」かと、ずっと勘違いしていました。
花の形が、長細い壷のように見えないこともないので。
検索しているといくつかのサイトで、ツボは「坪」で、庭の意味からきているとありました。
こうした野の花ひとつをとっても、観察され分類され、そして命名されるまでの時の長さに気が遠くなりそうです。
桃源郷のような風景も、来週の面会の時には新緑の季節に変わり始めていることでしょう。
はかない春の幻想の世界でした。