端境期をうめる野菜はどこからくるのか

オクラだけでなく、大好きなインゲンやゴーヤも今年はまだまだ高値でなかなか買えません。


それでも野菜売り場には、いつも安定してたくさんの野菜がありますね。
一時期高かったキャベツやレタスが今は安いし、小松菜やほうれん草は安定した価格で本当に助かります。


これも日本の地形が細長く沖縄から北海道まで気候や温度の変化があったり、温室栽培などの技術によって、こちらの記事に書いたような「産地リレー」が可能だからかもしれませんね。


子どもの頃にはよく耳にした「端境期(はざかいき)」という言葉をあまり意識していない最近の日常生活ですが、オクラをみるとこの言葉が思い出されるのです。


1990年代初めのころ一時期住んでいた東南アジアのある地域で、「日本の端境期をうめるため」にある野菜の栽培が奨励されて広がり始めていました。


日本で一年中その野菜を食べられるようにするために、それこそ世界中からの産地リレーが行われようとし始めていたことに、それで良いのだろうかと気になっていました。


それからしばらくして、1990年代半ばにはその野菜が本当に日本の店頭に並ぶようになりました。
でも数年もすると、こんどはオーストラリアなどからも「日本の端境期」をうめるために輸入されるようになりました。


「日本の端境期うめる」ための競争に、あの地域の人たちはどうなったのだろうということがとても気になっていて、いつか定点観測のためにもう一度訪れてみたいと思うのですが、時間も気力もなくなってしまいました。


しばらくしてその野菜の次にオクラもタイやフィリピンからの輸入品を見かけるようになり、いつの間にかスーパーの野菜売り場では顔なじみになりました。


<フィリピンのオクラ>


Wikipediaオクラの「分布と栽培」に、「国内出荷量が減る冬季を中心にタイ、フィリピンなどから輸入している」とあります。
たしかに、タイとフィリピンからのオクラをよく見かけますね。


検索したら、すぐにこのオクラを輸入している会社がわかりました。
そのフィリピンの現地法人グリーンスター社のHPに、農場から出荷・輸出までの写真があります。


当社では、日本のオクラの国内生産が全くない時期あるいは不足する時期である10月中旬から5月下旬に合わせて、フィリピンにて日本向けのオクラを生産し、輸出を行っています。

我々の使命は、レベルの高い日本市場のニーズに応える安全で品質の良いオクラを生産・供給することです。


こういうところで日本向けのオクラが作られ、こんな風にして出荷されるのですね。
向こう側の「作っている人」や「出荷のために働いている人」が少し身近に感じられました。


もうひとつ、興味深い文章が見つかりました。
日刊マニラ新聞のナビ・マニラの記事「私達の遺産ー『オクラ』もフィリピン産」にはこんなことが書かれていました。
(HPの「グルメ」→「食のメモ」と進むと見つかります)

日本で「オクラ」の有名産地は四国の高知だ。この日本製が出回る季節の春夏以外に日本で売られているオクラの相当部分がフィリピン産と考えてもよい。フィリピンから日本へ輸出される農産品の中では数少ない成功品のひとつといえようか。


ということは、日本向けに生産・出荷しようとして失敗に終わった事業がたくさんあるのでしょうね。


店頭に並ぶ野菜だけでなく、外食や中食で使われる野菜ひとつとっても、向こう側にはたくさんの当事者がいることを日頃は忘れてしまいそうです。


もう少し続きます。