帝王切開について考える 20 <帝王切開術後の合併症>

前回の記事に書いたように、帝王切開術後に起こる合併症の怖いものとして術後出血と肺塞栓症があります。


術後出血に関しては前回、「周産期医学」2010年10月号(東京医学社)からその内容を紹介しましたので、そちらを参照してください。


肺塞栓については、以下のように書かれています。

1. 肺塞栓症(0.01〜0.04%)


 妊娠末期は分娩後の止血に備えて血液凝固能が亢進している状態である。加えて妊娠子宮による骨盤血管の圧迫により下肢の静脈は血液が常にうっ滞している状態であり深部静脈血栓症のリスクは高まっている。さらに多胎妊娠や前置胎盤、切迫早産のため帝王切開前に床上安静を強いられている妊婦は多く、これらの要因のため帝王切開術後には下肢深部静脈血栓の形成およびその飛散による肺塞栓症のリスクが高い状態である。帝王切開術後の肺塞栓症の発症は経膣分娩後より5〜10倍高いといわれている。


それ以外に、切迫早産で点滴治療中に帝王切開になった方には肺水腫のリスク(1%未満)があったり、感染(5%未満)、創部縫合(癒合、治癒)不全(5%未満)、イレウス(腸閉塞)(1%未満)、そして月経異常などが挙げられています。


それらの術後合併症の中で肺水腫はまだ遭遇していないのですが、感染や創部癒合不全、イレウスのケースにはあたったことがあります。


破水や羊水混濁などで子宮内感染が先行していると思われる方の帝王切開で、術後3日頃から38度以上の発熱が続き、高次病院へお願いしたこともあります。
術後感染も実際に遭遇する確率は少ないかも知れませんが、特に緊急帝王切開術の術後には頭に入れて観察をしてく必要があると痛感しました。


創部の癒合不全については、前回の記事でも「腹腔内に出血していた」ケースに遭遇したことがあることを書きました。
記憶に頼っているので少し不正確ですが、たしか術後十時間ぐらいだったようです。
心拍数が100以上続いている以外はバイタルサイン上も問題なく、悪露や術創部の出血も正常内でした。ただ、創痛よりは腰痛を訴え、強い鎮痛剤を使っても変わらず、腹腔内出血を疑って検査をして最終的には周産期センターへ搬送になりました。腹腔内に2000mlぐらいの出血があったそうです。


イレウスのケースは術後4日目ぐらいの方で、普通食を食べていましたし、赤ちゃんの世話もご自身でできるような段階でした。
「下痢が続く」以外は、一見元気でした。
腸閉塞というと「お通じがでない」ことがまず頭に浮かぶと思いますが、この方の場合、腸が十分に動いていなくて下痢になっていたそうです。外科に転科になり、イレウスの治療のために退院が数日ぐらい延期になったと記憶しています。


私が経験している術後合併症は、全体からみればごくごくわずかの経験にしかすぎません。


帝王切開というのは、本当にお母さんの体にさまざまな変化や危機的な状態を与える手術だという思いがますます強くなっています。



<「帝王切開について考える」の小まとめ>


帝王切開について考える」の記事も20になりました。
ちょうどそんな時に、こちらの記事で紹介したうさぎ林檎さんのグログ「うさりーぬめも」でまとめをつくってくださっていました。
いつもありがとうございます!


ということで、「帝王切開について考える」の過去記事はそちらの目次からどうぞ。