観察する 4 <「赤ちゃんを一瞬で泣き止ませる方法」>

先日、「赤ちゃんを一瞬で泣き止ます」テクニックをテレビで見かけました。
検索してみたら、「キャリア30年の小児科医が伝授する『赤ちゃんを一瞬で泣きやませる方法』がすごい」が情報の元のようです。


優しく赤ちゃんに声をかけている小児科の先生で、それだけで赤ちゃんはリラックスするだろうなと微笑ましい様子です。


ただ、この方法は「赤ちゃんといっても新生児、しかも生後2〜3日を過ぎた新生児なら一時的に効果はあるかもしれない」けれど、なんでも赤ちゃんを泣きやませられるという万能感と期待感を持たないほうが良いのではないかと思いました。


「赤ちゃん」っていったいいつまでか、というほどその月齢範囲は広いですしね。


<あの赤ちゃんはなぜ啼いているのか>


まず、あの赤ちゃんは生後どれくらいかというと、へその緒がとれているので生後1週間前後から1ヶ月以内の新生児だと思います。


たぶん、顔つきや体の発達具合からみて生後1〜2週間ぐらいかなという印象です。


きっとこの診察室に入ってからも眠っていたのではないかと思います。
そこで服を脱がされてびっくりしたことと、眠りから覚めたことで腸が動き始めたのではないかと。


まずは縦に抱っこするだけで、目が覚めて2〜3分でゲフッとするあたりの啼き方が落ち着くことがほとんどです。
東南アジアのあのお母さんたちなら、すぐにおっぱいをくわえさせることでしょう。


でもこの場合は診察なのでおっぱいをくわえさせて泣き止ますわけにはいきません。
そこで、裸になっているとモロー反射も出てビクッとしてはまた啼いてしまいやすいので、そっと手足をおさえると落ち着きます。


まあ、こういうことに気づくのにはたぶん30年のキャリアは不要で、新生児に日々接しているスタッフなら無意識のうちに体得していることでしょう。


ただし、「無意識」のためにあまり新生児の様子が観察されていないので、「これが効果がある」と判断されやすいのだと思います。

なので赤ちゃんの体をまあるくするとか舌小帯切除で育てやすくするといった方法論につながりやすいのではないでしょうか。


「赤ちゃんを泣き止ませたい」という大人の気持ちの問題になってしまうので。


たぶん、冒頭のビデオに移っている赤ちゃんのご両親は初めての子育てなのかもしれません。
2人目以降のご両親だったら、あのくらいの啼き方は「泣きわめいている」というほどには感じないでしょうから。


あと、あの方法でも啼きやまないのが生後2〜3日ごろまでのうんちの闘いの時期の、特に真夜中あたりの絶叫に近い啼き方です。
あるいは、退院後にも1ヶ月ごろまでにぐんぐんと体重が増える日の夜中とか。


そして2〜3ヶ月以降から1歳ごろまでのいわゆる夜泣きは、きっと人類が延々と悩まされて来たのでしょうね。
いまだに、これといった対応方法がなくて、その時期を過ぎるまで見守るしかないのだろうと思います。


そのくらいの時期の赤ちゃんにはまず、冒頭のビデオのような抱き方は無理ですしね。


「赤ちゃんを泣き止ます方法」
過度の期待はしないほうがよいかもしれません。



「観察する」まとめはこちら