助産師の世界と妄想 16 <アドバンス助産師って何?>

看護協会の会員なので、毎月「協会ニュース」が送られてきます。
ざっと助産師に関することは目を通していますが、6月号には気になった記事がありました。


ひとつは平成27年度通常総会での協会の「重点政策・重点事業」です。「少子超高齢化社会に対応する人材育成」の中に、助産師に関してはこんなことが挙げられていました。

助産師実践能力習熟段階(クリニカルラダー)認証制度の普及

保健師も「キャリア形成推進事業」、看護師も「クリニカルラダーの開発」が挙げられていますが、助産師だけすでに「認証制度」が作られているようです。


もうひとつの記事はこのラダーに関連しているのですが、「産科管理者交流集会 助産師必要数の算出方法など学ぶ」という見出しなのですが、書かれている内容はこんな感じ。

講演で登壇した福井トシ子常任理事は、助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)について「英略称はCLoCMip(クロックミップ)。普及するように今日から使用して欲しい。

続いて、8月から始まるCLoCMipレベルⅢ認証制度の認機関である日本助産評価気候の堀内成子理事長が講演。暫定措置として2015・16年に限り、1助産学担当教員(産科臨床経験5年以上の助産師)2看護管理者(臨床経験10年以上、うち産科臨床経験5年以上の助産師)3助産所開設者(開業届を出している助産師)からの申請にも対応することを説明した。


で、見出しは助産師必要数の記事なのですが、それに関しては「本会HPに掲載」となっていて何も書かれていない不思議な記事でした。


<なぜ「アドバンス助産師」と書かないのか>


さて、この「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベルⅢの認証制度」については、すでに今年2月にはマスメディアを通して報道されていました。


その朝日新聞の記事には認証されれば『アドバンス助産師』と呼ばれると書かれていたことが、「助産院は安全?」の「『アドバンス助産師』が目指すものは?」を読むとわかります。


また、今月7日の日本経済新聞の記事「診療所へ出向 産後ケアまで 助産師の能力・役割拡大、経験積み、少子化に対応」の中でも、「『アドバンス助産師』始まる」という小見出しで書かれています。

助産師外来や院内助産を普及させるには助産師一人ひとりの能力向上が欠かせない。ただこれまでは能力をはかる物差しがなかった。このため日本看護協会日本助産師会(東京・台東)など5団体は8月から、助産師の実力を客観的に評価し、認証する制度を始める。


分娩介助100例以上、妊婦健診200例以上などの経験に加え、新生児蘇生法や分娩監視装置に関する研修の受講が条件。病院を通じて申請し、第三者機構の日本助産評価機構(東京・豊島)が認証する。


認証された助産師は「アドバンス助産師」として認定され、「自律して助産ケアができる助産師」として公表することもできる。評価機構の堀内成子理事長は「産科医にとってもチーム医療で適切な役割分担が可能になる」と意義を語る。


申請者は経験年数が7年程度の助産師を想定しており、11月に800人規模でアドバンス助産師が誕生する見通し。5年ごとの更新制とする。


腑に落ちないのは、ここまでマスコミを通じて「アドバンス助産師」という言葉を広めているのに、看護協会ニュースには全くその名称が書かれていないのですね。
いきなりCLoPMipとか新語が出てくるし、何だか気になる変な記事だという印象でした。


<臨床で働く助産師には「晴天の霹靂」な認証制度>


すでに8月の認証制度に向けて研修会が開かれていることは、「風の便り」で知りました。
私の周囲の助産師(経験年数10〜20年以上)は、ほとんどこの認証制度を知らないようです。


それもそうですよね。
昨年7月に「看護協会の助産師クリニカルラダー」という記事を書きましたが、クリニカルラダーそのものが一昨年できたばかりなのに、いきなり「レベル3を認証する」しかも5年毎更新といった制度が決定したわけですから。


しかも冒頭の看護協会のニュースを読むと、私のように診療所や病院で働く助産師は暫定措置の申請にも含まれていない書き方になっています。


こういうのを「はしご(ラダー)をはずす」というのではないかと言いたくなるものです。


さて、しばらくこの「アドバンス助産師」について考えてみようと思います。



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