いんげんとささげ

今日のタイトル、ひらがなで書くと謎の呪文のようですね。


私の好きな野菜のひとつに、いんげんがあります。
正式な名前はインゲンマメのようです。


いんげんといえば夏の野菜なのですが、昨年の夏はよく行くスーパーではなぜかいんげんがあまりありませんでした。他のお店はよくわからないのですが、日本全体にあまり出回らなかったのでしょうか。
いつもなら山のように買って、炒めたりあえたり、夏に大活躍なのですが。


今年になって、むしろ冬の寒い時期にいんげんが店頭に並び始め、昨年の夏に食べられなかった分を取り戻すかのように食べました。
例年だと、冬でも多少は売られているのですが高価です。
ところが、今年は一袋150円ぐらいで売られていました。輸入物だとすぐにわかったのですが、東南アジアだろうと思っていたら、なんとオマーンから来たいんげんでした。



あいまいなのですが、90年代いえ2000年代でもいんげんは夏にしか食べられない野菜だったように記憶しています。
サヤインゲンの育て方を見ても、収穫は6〜9月になっています。
9月ごろに、だんだん店頭からいんげんが姿を消していくと、「ああ、来年の夏まではもう食べられないのか」と寂しく思っていました。


ところが、「野菜ナビ」の「サヤインゲンの旬(出回り時期)」を見ると1年を通して、同じぐらいの年間卸売量があるようです。


そして同じサイトの「サヤインゲンの輸入先と輸入量」を見ると、オマーンとメキシコから輸入されていて、ほとんどがオマーンからのようです。
いつ頃から、オマーンいんげんが輸入され始めたのでしょうか。全然気がつきませんでした。


Wikipediaオマーンの「経済」にはこう書かれています。

河川もないにも関わらず、オアシスを中心に国土の0.3%が農地となっている。悪条件にもかかわらず、人口の9%が農業に従事している。主な農産物は、ナツメヤシ(25万トン、世界シェア8位、2002年時点)。穀物と根菜では、ジャガイモ(13キロトン)の生産が最も多い。その他、冬場での生鮮サヤインゲンの流通を補うため、日本向けサヤインゲンの大規模生産も行われている。


「おまえの村に水はあるか」が挨拶言葉の、はるか遠い国からいんげんが輸入されるようになったのですね。日本の端境期のために。



<ささげ>



さて、もうひとつの「ささげ」ですが、日本ならアズキのかわりに使うささげ豆が思い浮かびます。


私がずっといんげんの一種だと思っていた野菜が、この記事を書くために検索していたらささげだったとわかりました。


東南アジアで暮らしていたときに食べていた「いんげん」は、日本に比べて長いものでした。
40〜50cmぐらいはありそうなものが、束になって売られていました。
初めて見た時には驚きましたが、食べてみると日本のいんげんに似ているし、いろいろな料理に使えるのでとても重宝です。
現地では、手でバキバキと適当な長さに折って、スープや炒め物に使っていました。


その長さから「三尺ささげ」と呼ばれたり、中の豆の数からジュウロクササゲと呼ぶのですね。


それにしても、誰かが「豆が十六個ある」ことに気づいたのですよね。さらに観察されて、その豆の法則性が明らかにされて名前としてつけられた、ということでしょか。


日本に戻ってからも、あの長いいんげんを食べたいと気にしてさがしていたのですが、関東ではお目にかかることはありませんでした。
Wikipediaの「生産」にはこんな説明があります。

現在では、主に愛知県と岐阜県奈良県及び鹿児島県の種子島奄美群島から沖縄県を中心とした地域で生産されている。食されるのもこの地方が中心である。あいちの伝統野菜、飛騨・美濃伝統野菜である。
(中略)
沖縄県奄美群島はウリミバエ発生地域のため、『植物防疫法』によってウリ科植物などとともに本土への移入が禁止されているため、現地で消費されている。


オマーン産のいんげんが店頭から姿を消した後は、沖縄産のいんげんが今、売られています。
でもジュウロクササゲは沖縄からは出荷できないようですね。


ところでいんげんささげの植物学的分類を見ると、「マメ目」「マメ科」までは同じですが、「属」でインゲンマメ属とササゲ属に分かれるようです。そしてササゲとジュウロクササゲは、「マメ科」のあとに「マメ亜科」からさらに分かれていくようです。


植物の分類は、本当に気が遠くなるような観察の積み重ねだったのだろうと、いんげんとささげの分類ひとつを見ても思います。