水のあれこれ 39 <自分に合った水がある>

先週のテレビ朝日の「GEt SPORTS」で、「競泳生活27年の集大成」というタイトルで松田丈志選手の特集がありました。


27年。
そうですよね、競泳選手として日本選手権の決勝や国際大会に出場してからの十数年の前に、長い長い練習期間があったのですものね。
華々しい時期はほんのわずかだと、改めて思います。


番組では北京オリンピックロンドンオリンピックと、2大会銅メダルを取った後のこの4年間の苦悩がまとめられていました。


ロンドンオリンピックのあと、リオを目ざすために久世コーチのもとを離れて、北島康介選手をそだてた平井コーチに師事することを発表した2012年の記者会見での涙は、記憶にあります。


そして2014年の世界水泳では200mバタフライでは準決勝敗退となり、そのあと再び、久世コーチの元で練習するようになったことを番組では追っていました。



観ていてふと思いついたのが、「自分に合った水がある」ということでした。


<うまくかみ合わない時間もその人をつくる>



私は病院から診療所まで、数カ所の産科施設に勤務してきましたが、基本的にはどこでも充実した時間だったと思います。


でも、どうしても「水が合わない」と感じる施設もありました。
その施設の方針だったり、人間関係だったり。
どんなに合わなくても少なくとも数年は勤務してから退職しようと自分の中で決めているのですが、その施設を退職した時の膝からガクッと力が抜けるような解放感に、よほど私は無理をしていたのだと気づきました。


ただ、今思えば、その水が合わない感覚もまた、同じ周産期ケアや看護といっても違うアプローチがあるという視野の広がりとか、多くのスタッフが出会ったり辞めていくなかでどのように人間関係を保っていくのかなど、悩みながら新たな課題に挑戦していた時期だったのだと思い返しています。


「水」が悪いことがすべてではなく、合わないと葛藤した中に自分自身を成長させる何かがあったという感じでしょうか。


この仕事をあと何年続けるのかなと思う時期に最近入って来たのですが、あの「水の合わない」感覚を体験したからこそ、今いる施設でのさまざまな葛藤からは逃げないで向かっていこうという思いになっています。


20代とか30代の仕事の楽しさというのは「充実感の喜び」という明るいものでしたが、50代になると「理想的な職場で働いているイメージ」とはほど遠い「苦悩が充実感」であり、自分の続けて来た仕事への集大成はその苦悩に立ち向かうことなのかなと思うようになりました。




さて、先日の競泳日本選手権の200mバタフライ決勝の録画はまだ観れないのですが、番組では4位でゴールしたシーンとインタビューエリアで泣いていた松田丈志選手の姿がありました。


「さすがだなという感じで、集大成にしたい」


勝負だけではない、泳ぎを極めていく経験を見続けて来たので、どのような結果であれ、松田選手はすごいしさすがだと思います。
5月のJapan Openやリオでの自由形を楽しみにしています。





松田丈志選手についての過去記事はこちら。

松田丈志選手、NHK「アスリートの魂」
松田丈志選手、銅メダル
競泳日本選手権、始まる!
なぜ泳ぎ続けるのか
「空中を飛んでいるような泳ぎ」
「教える」と「背中を見せる」
抵抗を味方にする


「水のあれこれ まとめ」は こちら