記録のあれこれ 41 ビデオ判定システム

世界水泳2019の熱戦のあと数日を置いただけで8月2日から3日間、FINAスイミングワールドカップ東京大会が辰巳国際プールで行われています。

東京大会のあと8月中に中国、シンガポールで、そして10月、11月と7カ国で開催予定のようです。

 

いつもならワールドカップ短水路(25m)で、東京大会は 秋の開催なのですが、急に日程が変更になり、しかも長水路(50m)の大会になったことを6月頃に知りました。

 

2017年の大会の時に、「その大会で活躍することが目標というよりは、その先にあるメインの大会に向けて強化の一環でもあり、短水路でスピード感を身体に覚えさせながら技術を磨き、さらには賞金を狙っていける」という松田丈志氏の記事を紹介しましたが、今回は長水路での試合なので、スピード感よりはタフさと集中力が目標でしょうか。

 

初日にもカテインカ・ホッスー選手が200mバタフライで優勝しましたが、あの鉄の女でさえ、疲れのためか泳ぎがとても重く見えましたし、泳ぎ終わってプールから上がる時も疲労困憊している様子に見えました。

それでも、初日には3人ほどの海外選手が大会新記録を出していましたから、皆さん疲労が溜まった中でも、ちょっとした気持ちの変化と集中力で泳ぎを再現し、越えていく

それが、競泳の醍醐味かもしれません。

 

さて、そんな大会の中でちょっとショックだったのは、あの百戦錬磨のローランド・スクーマン選手が50m自由形の予選で失格になっていたことです。

 

*ビデオ判定システムが取り入れられた*

 

先日の世界水泳の200m個人メドレーでの大橋悠依選手の失格は、「まさかあの選手が」と驚きました。気持ちを切り替えて、最終日の400m個人メドレーは見事だったと思いました。

 

今シーズンはなんだかこの失格の判定が気になって検索していたら、ちょうど松田丈志氏の「露わになった日本競泳陣の課題。女子強化と若手の発掘が急務だ」(Sportiva、2019年7月30日)の記事の中で、判定システムが変わったことが書かれていました。

 

今回のトピックスでは、ビデオ判定システムの導入もあった。これまで競泳はプールの上から各レーンのスタートサイド、ターンサイドそしてプールサイドから審判員が目視で選手の動作に違反がないかチェックしていた。これまでは違反を取るのは審判員の目視で、その場の判断でしか取れなかった。しかし、今回からは目視で疑わしい動作があった場合、レース中に水中から録画し続けている映像をレース中またはレース後に確認して審判員が判定するようになった。大きな違いは、全てのレースで映像が残っているため、審判員は自分の目視だけで判断する必要がなく、疑わしい動作が見られた場合、すぐにビデオ判定を活用できるようになったことだ。

 

バレーボールでも数年前から「チャレンジ」が取り入れられた記憶があるのですが、2013年のようです。

審判員や監督・選手が見たことと、ビデオの記録では違うことが明確にわかるようになりました。

 

人は見ているはずなのに見ていなかったり、思い込みや認知バイアスに陥りやすいので、客観的なデーターで正確な判定をするシステムは、むしろ選手を守るリスクマネージメントともいえそうです。

ただ、ターンの時のフォームの正確性も厳密に求められるようになるので、私なら泳ぎがぎこちなくなりそうですが。

 

これまでは「疑わしきは罰せず」という気持ちで見ていた審判員が、「疑わしきはすぐにビデオ判定でチェック」というふうになったことが大きな違いだ。そのため今大会は、今まで以上に失格を取られた選手が多かったし、競技進行中、ビデオ判定の審議のために時間が使われるシーンも多く見られた。

 

なるほどそういうことだったのかと、松田丈志氏の解説もまた、時代の変化を正確に記録した記事だと思いながら読みました。

 

 

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