不定期の記事になりそうと書きつつ、数字の話が続いています。
今日はミルクの濃度についてです。
脱脂粉乳と牛乳に書いたように、薄い水のような牛乳が学校給食で始まった世代なので、むしろ脱脂粉乳が濃くて美味しく記憶に残っています。
あの1960年代に比べたら、いろいろな牛乳が店頭に並ぶようになりました。
乳脂肪分が多くて濃厚な牛乳とか、反対に乳脂肪分を抑えて低脂肪・低カロリーにしてある牛乳、あるいは特定の農場からの限定販売品とか、乳製品売り場を見ているだけで楽しいですね。
でも好みだけではなく、濃度を正確にしなければいけない乳製品があります。
それが乳児用ミルクです。
薄くても濃くても、乳児の健康に影響を与える可能性があります。
東日本大震災の時に「哺乳瓶がなくても紙コップで授乳できます」という情報が広がった時に、その背景にある矛盾した考え方に疑問を持ちましたが、それ以前に現実的な疑問がありました。
紙コップで飲ませられるとしても、どうやって正確な濃度に調乳するのだろう。
<「哺乳瓶」は正確な濃度に調乳するための道具である>
紙コップで実際に調乳をするとしたら、一番困るのがお湯の量がわからないことではないかと思います。
検尿用の紙コップなら量がわかりますが、医療用の特殊な紙コップです。
通常、出回っている紙コップには容量がわかるような線が書かれているのを見た記憶がありません。
哺乳瓶というのは、調乳のための容量がわかるようになっています。
だから赤ちゃんに安全な濃度を守った調乳ができます。
「哺乳瓶と人工乳首を洗う水がない場合、紙コップで飲ませられます」という情報は、実際にはあまり役にたたないのではないだろうか。
哺乳瓶さえ洗えない状況なら、正確な濃度で調乳するのは大変そうだなあ、と。
やはり災害などでの緊急時には、調乳ずみミルクと使い捨て哺乳瓶・乳首の準備が合理的ではないかなと思います。
ずっと使う必要もなくて、せめて清潔な水が確保できたり、被災後の生活再建の見通しがたつあたりまででよいのではないかと思います。
今回は、あの紙コップを勧めるメッセージを誰かがどこかで広げていないとよいのですが。
正確な濃度という視点から考えたら、現実的ではない方法だと思います。
「数字のあれこれ」まとめはこちら。