食べるということ 13 <食べてすぐ寝て牛になりたい>

こちらの記事の「お昼ご飯」に書いたように、東南アジアで働いていた時にはお昼ご飯が終わると30分ぐらい昼寝をしていました。


一緒にお昼ご飯を食べたあと、「さあ、寝よう」とベンチを寄せてベッドを作り始めた現地スタッフに、最初の日はとてもびっくりしました。
それまでの感覚では、職場で日勤中に眠るなんてあり得ないことでした。
「ボスに叱られないの?」と聞くと、「ボスも寝ているから大丈夫」と。
たしかに、昼食後はオフィス中がシーンとしていました。


もうひとつ頭によぎったのが、「食べてすぐ寝ると牛になる」でした。


「日本だと、食べてすぐに横になると牛になるって言われていて、あまり勧められないことだから」と言うと、「えっ?」と驚かれたのでした。


「日本の常識は世界の常識」ぐらいに世の中の多様性に疎かった20代半ばの、初めての外国暮らしでした。



「食べてすぐ寝ると牛になる」は、リンク先の「ことわざ学習室」の説明にあるように「行儀が悪いので、そのことをいましめた言葉」として、子供の頃から言われていました。
でも、やはり大人も昼食後は眠いのでしょう。そういいながら、私の両親も休日はよく昼寝をしていましたから。


さて、「さあ、寝よう」と言われても、最初の頃はかえって眠気も飛んでしまって、気持ち良さそうに昼寝をしている同僚の顔を見ているだけでした。


だんだんと生活に慣れると、私も短時間で眠れるようになりました。
20分から30分ぐらい眠っただけで、午後からの仕事に向けて元気がでました。
暑い国でしたから、理にかなった習慣だと思えました。


帰国して再び総合病院で働くようになると、昼寝どころか昼食もそしてお茶さえ飲めないようなあわただしさに、なんだかあの生活は幻だったのだろうかと南洋幻想のような感覚に戸惑うのでした。



<食べて寝ると良いのか悪いのか>



1980年代当時は、まだ「食べてすぐに昼寝をすることはどうなのか」と思っても、情報を得ることはできませんでした。


「『食べてすぐに寝ると牛になる』のは本当か?!」というまとめで、ネット上で書かれている情報を読むことができるのですが、いろいろですね。
「自分が欲しい答え」を信じるしかなさそうなくらい、あまりよくわかっていないということでしょうか。



シエスタ ー 「起きていてもシエスタ」>



世界の国々の中には、昼食後に昼寝をするシエスタという習慣があることを知ったのも、この国で暮らしたことがきっかけでした。



こんなにゆっくりなお昼の時間があることで、決して怠けているわけでもなく、午後からの仕事の効率もよくなるように感じましたし、生活全般にあくせくすることなく時間が過ぎていくようでした。


ただ、Wikipediaシエスタの説明を読むと、ずっとイメージしていた「昼食のあとに昼寝をする」こととは違うようです。

siestaは昼寝を意味するのではなく、長い昼休みに何をしてもよいということである。起きていてもsiestaである。

へえーー。


そしてその理由に「スペイン人は伝統的には日差しを嫌う傾向がある」ことも書かれていて、世界は知らないことがいっぱいですね。


理由はともあれ、昼食をゆっくりとれる時間がある生活はよかったなあと懐かしく思い出すのです。



つらつらとこの数日間、ゆっくり食べることについて書いてきたのですが、何が書きたかったかというと、健康に関する仕事をしている私たちの、もっと健康的な食事の時間を確保して欲しい!ということでした。



昨日も、5分ぐらいで飲み込むような昼食でした。
誰か、全国の医療機関に勤務する医療従事者の不健康な食事の取り方を調査してれるといいのですけれど。
社会の健康をまもるのは、まずそこからだ!と思うのです。



「食べるということ」まとめはこちら