事実とは何か 20 <火災の原因>

幼少時に近所でのガス爆発事故の記憶が恐怖心とともに残っているので、いまだにガス器具というのは苦手です。


また中学生の頃、住んでいた家の目の前の製材所が全焼したことがありました。
真冬の寒い日の夜でした。
私の部屋の窓が何だか明るいのでカーテンを開けたところ、曇りガラスの向こうは真っ赤で、窓の結露から湯気が立ち始めていました。
「火事だ!」と親に知らせ、消防車が来るまでの記憶はほとんどありません。


とりあえず、制服と教科書を詰めたかばんを持って外に逃げましたが、あとで「あんな時に教科書を持って逃げるなんて」とちょっとあきれられました。


製材所とは3mほどの道で離れていた自宅は風向きのおかげで延焼は免れましたが、消火作業で水浸しになり、2週間ほどは友人の家にお世話になりました。
片付いて自宅に戻ってからも、しばらくは家の中がきな臭くて落ち着きませんでした。


結局、その火事の原因はわからなかったようです。
タバコの火の不始末ではないかとか、経営が傾いて保険金目的の放火だったのではないかとか、大人たちの憶測が広がるだけでした。


空気が乾燥する時期になると、火事の報道が増えます。
子どもの頃に比べると、消防車のサイレンの音を聞く機会は減りましたが、連日、どこかで火災があったニュースが絶えません。
出火原因は何か、その再発防止対策は何かという点を私は一番知りたいのですが、報道の時点ではまだ原因不明のことが多くて、火災現場の映像のインパクトは残るけれど、そのまま原因のことは人の記憶からは忘れられてしまうように感じます。


火災のニュースを聞くと心がざわつくのですが、「ではいったい何を気をつけたらよいか」あたりがぼんやりとしか見えてこなくて、漠然とした不安だけが心にくすぶり続けている感じです。


<暖房機事故のニュース>



先日、暖房機事故についてのニュースがありました。

暖房機事故、5年で95人死亡、NITEまとめ
2016年11月26日、日本経済新聞


製品評価技術基盤機構(NITE)は、家庭で使う電気ストーブなど暖房機を巡る事故が今年3月までの約5年間で975件あり、誤った使い方や不注意による事故が目立っているとして注意を呼び掛けている、多くは火災を伴い、火災や一酸化炭素中毒など85件で計95人が死亡した。


NITEによると、製品別の事故数は多い順に、電気暖房機488件、石油暖房機447件、ガス暖房機40件。電気ストーブは2014年1月に静岡県で就寝時に使っていた70代男性が死亡した火災が発生。近くにあった可燃物が接触したのが原因とみられる。


石油ストーブでは今年2月、大分県で住宅を全焼する火災があり、70代男性が死亡した。給油タンクのふたが確実に閉まっておらず、点火時にこぼれた灯油に引火した。3月には北海道で石油ファンヒーターに誤ってガソリンを給油したのが原因とみられる火災で、60代男性が死亡した。


ガスストーブでは大阪府で昨年3月、ガスが漏れて点火時に燃え上がり、近くにあった服に引火、消そうとした男性が軽傷を負った。カセットボンベが正しく装着されていなかったという。


暖房機の取り扱い説明書には、注意点として書かれているであろうと思われることがなかなか人の意識に残らず、火災が繰り返されているような印象です。



リスクマネージメントが取り入れられた医療現場でも、なかなか「これで大丈夫」「そんなことは起きるはずがない」という思いこみから解放されることが難しいことを痛感しています。


ただ、火災については「発生したニュース」だけではなくて、原因がわかった時点で状況を伝える報道があると、もう少し人の意識も変わるのではないかと思うことがあります。
せめて、こういう火災原因についての情報を、定期的にテロップで流してくれるとよいのにと思います。


落ち葉の近くにタバコの吸い殻がくすぶっているのをみると、ああ本当に失敗に学ぶというのが難しいのが人間の社会だなあと思いますね。




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