産後ケアとは何か 33  <産後の受診のハードルの高さ>

30数年間、ほぼ医療機関で働いて来たので、職場の健診を当たり前のように受けてきました。


少しの期間、海外へ行くために国民健康保険に切り替えたことがあるのですが、その時に区から健康診断の通知が来ました。
年齢に応じて心電図や眼底検査など、職場よりも充実した内容で手厚く感じました。もちろん保険料はすごく高かったのですが。


まだこの時点では、医療従事者でありながらこの健康診断と国民皆保険制度のつながりをよく知りませんでした。
そして私が生まれた頃に始まった国民皆保険制度の前は健康診断を受けるどころか、病気になっても代替療法に頼るしか無い時代であったことも、まだ見えていませんでした。


それだけ、歴史の中では短時間で当たり前のように誰もが定期健康診断を受ける時代になったということが、最近ようやく理解できたのでした。


<現在でも定期健康診断から遠い存在の人もいる>



妊婦健診にいらっしゃる方々とお話ししていて、ある時ふと疑問がわきあがりました。
無職で夫の扶養家族になっている女性は、健診の機会があるのだろうかと。
特に、二人目三人目の方たちは、妊娠中は健診があるけれど、出産後から次の妊娠までなにか健診の機会があるのだろうか、と。


「健診はもう何年も受けたことがない」
質問した方のほとんどがそう答えました。



本当に医療従事者なのに、恥ずかしいほど健診の制度については知らないことばかりです。


国民健康保険であれば家族でも健診のお知らせはくるのでしょうが、健康保険組合や共済保険の場合にはその家族の健康診断はどうなっているのでしょうか?


「全国健康保険協会」のホームページを読むと、申請すれば「40〜74歳の被扶養者」にも一部健診の補助があるようです。


39歳までの方はどうなるのでしょうか。



<自分の体のことが後回しになる>



妊娠中は手厚く妊婦健診として補助があり、不調の時にもすぐに受診されますが、出産後は体調が悪くても受診につながらず症状を悪化させることがあります。


赤ちゃんの世話に追われて、自分のことが後回しになりやすいのかもしれません。
受診するには、受診の間赤ちゃんを預ける人を見つけなければいけませんし、受診するための交通費や医療費の支払いにもためらいがあるかもしれません。
あるいは多少の不調は、産後の寝不足のせいぐらいと思って受診をためらうのかもしれません。


妊娠中や産後しばらくは、感染症にもかかりやすくなおりにくいのですが、特に見逃されやすいものに膀胱炎があるのかもしれません。
先日も、「知人が産後に膀胱炎を悪化させた」という方がいらっしゃいました。


退院前にする産後の生活の話では、「赤ちゃんのことでは何をおいても受診されるのですが、ご自身のことは後回しにされることが多いので、自分の体のことも大事にしてくださいね」とお話ししています。


でも実際には、受診や健診を受ける機会が経済的な理由や赤ちゃんの世話で制限されているのではないかと思います。
実態はどうなのだろうと、とても気になっています。






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