事実とは何か 23 <機械化で人は減らせるのか?>

人海戦術の時代から機械化が進むと、少ない人数で大工事も短期間で終了できるのは確かだろうなと思います。
江戸時代に玉川上水を作っていた時代と、現代の治水工事を比較しても明らかですね。


ただ、どんな「現場」でも機械化が人を減らすことができるのか、時間を短縮できるのかと答えのない問いが思い浮かんでいた時に、m3.comの医療ニュースにちょうどこんな記事がありました。

3時間待たせる病院、患者の立場で対応を【わたしの医見】
2016年12月19日(月)配信 読売新聞


さいたま市緑区 主婦 45


いつも通っている病院がある。それほど大きくはないが、行けば3時間は待たされる。しびれを切らして「いつ診療を受けられるのか」と看護師らに尋ねる人をよく目にする。さんざん待たされた揚げ句、主治医でない医師にまわされることもある。


診察後、会計までの時間もやたらと長い。私より後に診察を受けた人が、次々と会計を終えて帰って行くことがあった。受け付けに尋ねると、理由は分からないが私のカルテが届いていないとのことだった。


病院に行く日は、通院時間も含めて半日はつぶれてしまう。もっと患者の立場になって対応してほしい。


何でもコンピューター化・機械化され、たとえば改札ICカードがあれば、少し前の時代のように切符を購入して入場するまでの数分のロス時間もなく、改札でちょっともたつく人にもイラっとするぐらいスピードが速い時代です。あるいは通販のように、欲しいと思ったものが翌日には手元に配達されたり。


「待たされる」ことが少なくなった時代に逆行するかのように、病院での待ち時間は長くなっているかもしれませんが、もしかすると以前とあまり待ち時間は変わらなくても、日常生活のスピードが速くて相対的に待たされる感覚が増していることもあるかもしれません。


あるいは、以前に比べて早く処理できることが増えて、より早くより正確な診断・治療を受けられるまでの時間が短縮されたために、患者さん側の待ち時間が増えたこともあるのではないかと思います。


こういう投書を読むと医療従事者の端くれとして心が千々に乱れ、「いろいろと理由があるのだ」と血圧が上がりそうになるのですが、気持ちの問題はさておいて、医療現場ではコンピューター化・機械化が進んで、むしろ人がもっと必要になったのではないかという印象があるけれど、どうなのだろうと感じたのでした。


さらに患者さんの待ち時間を減らし、満足度を高めるためにはどれだけの設備とどれだけのスタッフ数が必要になるだろう。
現在、勤務している診療所の混雑具合を思い浮かべても答えは見えません。


今できることは、「お待たせしてすみません」とていねいに対応するぐらいでしょうか。
「こっちだって忙しいんだから」という気持ちが態度や言葉に出ると、冒頭のようなお気持ちにさせ、また思わぬミスにつながってヒヤリとする失敗学のような経験は誰もがあるのではないかと思います。


新聞社側もそういう接遇の話にしたい意図をもってこの投書を載せたのではないかと思うのですが、「患者さんの待ち時間」に現場はどのような業務をどれだけこなしているのかが可視化されるような、システムの問題にも切り込んでもらえたらうれしいですけれど。


すみません、「事実はどうなのだろう」と、今日は感じただけの話です。





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