産後ケアとは何か 36 <「産前産後ケア推進協会」とは>

前回紹介した産後ケア協会アロマセラピーの流れがあるようですが、もうひとつ「一般社団法人産前産後ケア推進協会」という団体がありました。
理事会のお名前を見ると、看護学科教授や准教授といった方々が名を連ねています。



「ごあいさつ」には、「生み育てやすい、社会のしくみや環境づくりのために。私たちは、産前・産後ケアに関する各種情報提供、研修、支援、認証、調査研究などを行っています。」とあります。


学問的な基礎がある団体のようなので、そろそろ産褥入院早期退院推進と産後ケアのその後の全体像が見え始めて、お母さんたちに伝えられる情報があるかと期待して読んでみました。


「事業概要」に「産前・産後ケアの普及・啓発」とあり、「産前産後ケアの定義」が書かれています。

産前産後ケア推進協会では、産前産後ケアとは、女性が、妊娠・出産・育児期における心身の変化や、仕事・家庭における役割変化、地域社会とのつながりにおいて、自分自身と子どもにとって最善の方法を選択し、かつ対応できるよう支援する実践をさすと考えています。すなわち、「親としての自立」です。

え?本当にその定義で大丈夫ですか?
「親としての自立」とは何でしょうか。


さらに「産後ケア」については以下のように書かれています。

特に、産後ケアについては、「分娩後、妊娠や分娩によって変化したからだが妊娠前の状態にもどるまでの期間、あるいは、分娩後のホルモンバランスの変化に伴い精神的に不安定な期間、母親になった女性の心身を癒し、親子の愛着形成と、親としての自立を促し、社会復帰への援助を行う、産後の女性を包括的に支援する実践」と定義し、社会に浸透することを期待します。

この定義に基づき、産後ケアのプログラムは、産褥期特有の心身の変化を踏まえた個別的なケアと、母乳育児をはじめとした育児全体の支援、さらに社会における関係性の再構築を行うことによる女性の自立支援を目的として実施します。単に、美容としてのケアやマッサージのみを行うことをさすものではないということを申し添えます。


今度は「女性の自立支援」ですか。
母乳育児の定義って何だろう?
「社会における関係性の再構築」って何だろう?
「産前ケア」の定義は何だろう?


<「ケアはニーズのあるところに発生し、順番はその逆ではない」>


疑問がいろいろありますが、この団体の定義する「産前産後ケア」が少なくともニーズに基づいているのであれば、そのニーズはどのように「私的領域」から「社会問題」へと認められるようになったのか、学問的な手法で調査研究された結果を知ることができるかもしれません。
でもざっと読んだ限り、そうした研究は紹介されていないようです。


さらに、そのHPの研究会の内容をみると、「食」を中心にした「産後ケア研究会」が開催されているようです。
ちょっと気になった回をピックアップしてみます。

第5回目の食材はお茶でした。浮腫予防、ドライアイ、乳腺炎予防など、身近な食材がを使ったお茶をご紹介しました。(2015/06/27)

第1回「冷やさずに快適に過ごすためのマタニティメニュー」として、冷房で冷えないための工夫をこらしたメニューと、夏バテ防止のメニューを作りました。(2015/08/22)

第2回「この秋、風邪をひかずに快適に過ごすマタニティメニュー」として、妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生メニューをつくりました。(2015/10/31)

第3回「妊娠中や産後は水分不足により便秘になりがち、(妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生!)食物繊維の他に養生する秘策とは!」(2015/12/19)

第4回「中医学的セルフチェック!!顔色や舌、話し方などから自分の体質を知ろう」妊産婦さんのチェックに役立つ!」(2016/04/15)

第5回「産前・産後のお茶のいろいろ!好評につき第2弾!!浮腫にオススメのお茶、悪露にオススメのお茶、産後養生茶など」(妊娠中や授乳期の薬をのみにくいママのためにオススメ食養生!)
(2016/06/18)

第7回「母乳トラブル予防の薬膳!!乳腺炎予防や母乳不測など養生する秘策とは!」
(2016/10/16)

第9回「産後うつ予防の薬膳!」春先は特に多い産後うつ!ママだけではなくいろいろ悩んでいる方へ養生する秘策とは!(妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生!」
(2017/02/19)

なるほど、この団体の使う「ケア」とは「養生」という意味のようです。


妊娠中も授乳期にも処方できる便秘薬や風邪薬はきちんとあります。
むしろ食事などだけではコントロールしにくいのが、妊娠・授乳期なので、ためらわずに主治医にご相談くださいね。


また、「春先に特に多い産後うつ」という傾向があるのかという点は、「わかりません」というのが、周産期関係者の責任ではないかと思います。そんな話は周産期医学関係の本には書かれていません。


ニーズの判断を間違うと、対応策は現実的なものではなくなります。
やはり理論化を急がないほうがよいのではないかと思いますね。



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