食べるということ 24 <女性が一人で飲む>

豊かな水とお酒の関係を考えていたら、今までの人生、本当によく飲んで来たなあと回想にふけってしまいました。
コーヒーもそうですが、もしかしたら水やお茶の総量よりもお酒のほうが多いかもしれません。


「初めてお酒を飲んだのはいつか」に書いたように、私が20代になった頃は、「女性は少したしなむ程度」だった時代から「居酒屋でボトルを開ける時代」に変化した頃でした。
それでも、周囲の友人も「飲みに行く」のは忘年会とかぐらいという女性が多い中で、なぜかお酒に強い友人たちに出会ってしまったのでした。


飲んでも飲んでも酔っぱらう友人は少なくて、はしゃぐこともなく、愚痴を話すわけでもなく、飲めば飲むほどいろいろな話題に花が咲く人たちでした。
ですから、当時はまだ二十歳そこそこの若い女性が居酒屋に来ることも「小生意気」と思われていたのだと思いますが、カウンターの席に通してくれるお店ができたのでした。


今でも懐かしく思い出すのが、80年代によく通った渋谷のワイン専門店です。
たまたま見つけて入ったお店だったような記憶があります。
ちょっと背伸びして、大人の女性ぶって気負いながら通ったのかもしれませんが、店主は決して小馬鹿にすることなく、ワインの飲み方や種類、そして合う料理などを教えてくれました。
友人達とは別々の道を歩むようになってから、そのお店にも足が遠のき、気づいたら別のお店になっていました。


<女性が一人で飲む>


女性が1人で飲んで食べることは、私にもまだ敷居が高いことでしたが、おそらく初めて1人で飲んだのは「あの日」ではないかと思い出すことがあります。


玉川上水に関心を持ち始めた頃、多摩川の上流も見てみたいと、青梅線に乗って出かけました。
現在ほど地元の情報などを得られる時代ではなかったので、当時は今よりもさらに行き当たりばったりでした。


青梅線が途中から単線になり、高度をあげて奥多摩へと入って行くと、「沢井」という駅があります。そこに酒蔵があることを発見し、途中下車しました。
たしか1990年代初頭の頃で、多摩川のすぐそばに酒蔵があり、多摩川を眺めながらお酒を飲むことができる場所がありました。
小澤酒造の酒蔵です。
そこで飲んだ「澤乃井」で日本酒のおいしさに目覚め、ちょうど近所にも「澤乃井」を扱っているお店があったので、よく購入するようになったのでした。


「小澤酒造」の概要を読むと、1966年には酒造の見学を開始してその見学者用の施設を開いているようですから、観光酒造の先駆け的なものなのかもしれません。


女性一人で入ることに躊躇したのですが、けっこう1人で飲んでいる女性がいたので同志がいることを発見したのでした。


<「ワカコ酒」>


「女性が一人で食べる」のコメント欄にDH98さんワカコ酒のことを書いてくださったのですが、なんと今年は地上波で放送されることになり、毎回録画して一緒に「ぷしゅ〜っ」となっています。


「孤独のグルメ」では食欲が涌き、「ワカコ酒」では酒量が増えるという罪作りなテレビ東京です。


番組の中のワカコさんは、お酒や料理に対する知識の豊富さもすごいのですが、目の前にあるお酒や料理とそれを作る人への敬意が感じられるのが、井の頭五郎氏との共通点のような気がしました。
うんちくではなく、集中しておいしいお酒や料理を楽しみ、そしてその余韻にひたるのが至福の時ですからね。


最近は、昼でも夜でも、料理とともに一人酒が心地よく感じるようになってきました。
以前は、せっかく外でお酒を飲むのであれば友人と楽しく飲み語り合いたいし、1人では手持ち無沙汰な気がしていました。
今はどこでも一人で回想することが尽きないので、カウンターでもぼーっとしていられるようになりました。


私の両親はビール一口ぐらいでも真っ赤になっていたのですが、なぜか私はワイン1本飲んでも顔色も変わらないし、そのあとも読書をするぐらい、幸いなことにお酒に強い身体を与えられたようです。
二日酔いとも無縁でしたし、飲んで悲しくなったりすることはなく、楽しくなることがほとんどです。
また、止めようと思えば、いつでもお酒と距離を持つことができます。
きっと、ワカコさんもそういう意味での「お酒に強い」女性として描かれているのだという印象です。


女性が自由に一人でお酒を飲むことができるお店が増えて、本当にいい時代だなと思うこのごろです。



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