運動のあれこれ 15 <「ドーピング陽性」の意味>

なにかと気持ちが沈むこの頃。
こんな時にはとにかく水の中で黙々と魚になるのが一番の気分転換だったのに、かえって「今ごろ、古賀選手はプールに入ることもできないような気持ちなのだろうな」と考えてしまいます。


最近、あの背泳ぎの浮き上がり方の感覚がだいぶつかめてきました。と言っても、「できた!」と思えるのは数回に一回ぐらいの確率です。
腕のかき方の方向をただ反対にすればよいわけではなくて、入水してからの抵抗のない体の角度とか、体幹のローリングとか、全てがかみあってようやくその腕のかき方になる感じです。
それこそ、何分の1秒といった体の動かし方の遅れでバランスを崩してしまい、うまく浮き上がれないのです。
こうしたコツを繰り返し繰り返し練習で体に叩き込んでいくしか、達人になる道はないのかもしれません。


それぞれの個人の体の特性に合わせた抵抗のない泳ぎを極めて、より速く泳げるようになるには、「何かを飲んだから」「赤血球を増やしたから」といったものは気休め程度にしかならないのではないかと、30年ほど泳ぎ続けての印象です。


<反証の難しさと反証のための時間の長さ>


「ドーピング」と聞くと、ずるいという印象で私自身が思考停止していました。
ところが、検索していると陽性になったけれども故意ではないことを証明させられているニュースがけっこうありました。


2月にもスピードスケートの選手が、オリンピックの会場を無念のまま後にされたようです。

斎藤団長「斎藤選手は禁止されている薬物やサプリメントを摂取したことに想い当たる節はないと話している。斎藤選手の主張は書面でCAS(スポーツ仲裁裁判所)のアンチドーピング部門に提出した。しかし、反証する証拠を短時間で入手できず、斎藤選手がチームに迷惑をかけたくないと自発的に暫定的な資格停止、平昌オリンピックの出場停止処分を受け入れて選手村を退去した。


「平昌五輪 斎藤慧のドーピング検査陽性受け斎藤選手団長が会見 『暫定的な資格停止受け入れは苦渋の決断』」(産経デジタル、2018年2月13日)


驚いたのは、恋人が服用した風邪薬の成分が影響したという「ドーピングが検査に引っかかった金メダリスト 『無罪』が判明 陽性の原因は『熱いキス』」(朝日デジタル、2018年1月30日)という記事でした。
昨年3月に陽性が出て、恋人の風邪薬が原因とわかり選手の過失がないことがわかるまで10ヶ月もかかっています。
その間、「4年間の資格停止処分」がどれだけその選手の人生を狂わせたのでしょうか。


先日の競泳Japan Openには、「競泳川崎駿がレース復帰、ドーピング陽性で資格停止」(日刊スポーツ、2018年5月27日)というニュースがありました。

川崎は、故意ではないこと、摂取していた海外製サプリメントの成分表に記載されていない禁止薬物が混入していた(汚染製品)ことを証明して、停止期間は4年から7ヶ月に短縮された。

昨年9月のドーピング検査で、人生が一転した様子を話されています。

 昨年9月の日本学生対抗選手権で、日本アンチ・ドーピング(JADA)の検査を受けて陽性となった。「最初に電話が来た時は、正直、何を言われているか、分からなくて、いたずら電話なのか、と思いました」と当時の困惑ぶりを振り返る。明大4年で卒業後の就職先も決まっていたが、それも取り消しとなった。「先のことが何も見えなくて・・・。もう水泳はできないかなとか。本当にどうしようと思った」と口にした。
 資格停止期間は昨年9月21日から原則4年間。「練習はしてもよかったんですが、どうしても気持ちが入らなくて・・・。月に2、3回しか泳げなかった。ずっと外に出ないで、家に引きこもっていました」。

「現在は2度目の4年生を過ごしながら」とも書かれています。


「ドーピング陽性」と告げられた選手の皆さんは、その後どんな思いで過ごされたのか、どんな人生の変化があったのでしょうか。



そもそも「ドーピング陽性」とは何を指しているのだろう。
そんな疑問から、もう少し続きます。



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