事実とは何か 73 インタビューから何を受け止めるのか

辰巳国際水泳場で競泳を観戦していると、レースが終わるたびに右手の飛び込み用プールの前で泳ぎ終わった選手が取材を受けている様子が見えます。

たくさんの記者さんたちに囲まれて数分ぐらい話をしていますが、遠くなので内容はわかりません。

何を話しているのかは、その後のニュースで知ることになります。

 

だいたいは同じポイントがニュースになって流れてきますが、ところどころ各社の違いが出て興味深いです。

 

先日、NHK2年4か月ぶりのレースについての記事を紹介しましたが、日刊スポーツでは以下のような報道でした。

古賀淳也2年4カ月ぶり復帰戦『課題が浮き彫りに』

2020年8月29日 

 

<競泳:東京都特別大会>◇シニアの部◇第1日◇東京辰巳国際水泳場場◇男子50メートル背泳ぎ

 

ドーピング検査要請による2年間の資格停止処分を終えた古賀淳也(33=スウィン)が、2年4カ月ぶりの復帰レースに出場した。50メートル背泳ぎで25秒04で1着。自身の日本記録24秒24には及ばなかったが、いきなり昨年日本選手権2位相当のタイムを出した。

古賀は「本当にうれしいですね。緊張はしなかったですが、レースが終わるといろいろ課題が浮き彫りになる。24秒台は出したかったですね」と話した。

古賀は09年世界選手権100メートル背泳ぎで金メダルを獲得。16年リオデジャネイロ五輪にも出場した。しかし18年4月に国際水連から陽性反応を通知された。「全く身に覚えがなかったので、ただただ信じることができませんでした。資格停止は当初4年間だったが、故意でないこと、摂取していたサプリメントの成分表に記載がない禁止薬物が混入(汚染製品)していたことを証明して2年間に短縮された。そして今年5月に停止期間が明けていた。

陽性反応を通知された直後は「こいつは不正をやったんだ、黒なんだ、と周りの人たちに思われたことがショックだった。(当初は)本当にしがすぐ隣にあった。ベランダを飛び越えると終わるんじゃないかとか、散歩をしていても急に涙が出たり」と振り返った。2~3週間かけて、潔白を証明することを決意し、復帰までの長い道のりに耐えた。この日、会場のスタンドからプールを見た。「プールを眺めることも他の人のレースを眺めることもなかった。懐かしいな、きれいだなと思った」。競技に戻ってきたことを実感した。

東京五輪が1年間になったことで、1度はあきらめた運がつながった。古賀は東京五輪について「狙えるなら狙いたい。100メートルの背泳ぎでもうI度チャンスがきた。五輪に出られるものなら、全力を尽くしてメダルも狙いたいと思います」と決意を口にした。

 

2社の記事の主旨はおおむね同じなのですが 、NHKの「その上で、復帰したらこういうふうに泳いでみようと想像を膨らませていた。やっと試せるときが来て本当にうれしい」と書かれた点に目がいったのに対して、日刊スポーツの記事は以下の部分が印象に残りました。

この日、会場のスタンドからプールを見た。「プールを眺めることも他の人のレースを眺めることもなかった。懐かしいな、きれいだなと思った」。競技に戻ってきたことを実感した。 

 

十数年、辰巳に通っているのですが、辰巳のプールの水面はほんとうにきれいでひき込まれそうな魅力があります。

観戦するだけの私でもそうなのですから、選手の皆さんにはまた格別な思いがあることでしょう。

 

この記者さんはどんな思いでこの箇所を記事に入れたのでしょうか。

 

少し構成が違えばこの古賀選手のインタビュー部分も、感動の物語として使われてしまいそうですが、この記事では私には淡々と事実を表現してくださったように読めたのですが、それはなぜなのだろうと考えています。

 

 

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