散歩をする 352 バスで十三湖へ

五所川原に宿泊したのは、五所川原バスターミナルを7時20分に出発するバスに乗ると1時間で十三湖の近くに行き、20分後に来る五所川原行きのバスで戻ってこられるからでした。

 

地図では十三湖岸公園のそばに美味しそうなしじみ料理のお店もあります。もちろんお店は閉まっている時間で、たった数分だけ湖面を眺めて戻ってくるというのは酔狂な計画のようですが、沿線にある溜池を眺めることがもう一つの計画でした。

 

地図を眺めていると、津軽平野北部へ行く交通手段には津軽鉄道がまず目に入りました。時々旅番組やニュースで見かける冬のストーブ列車の鉄道で、これまた勘違いしていたのですが、あれは五能線だと思い込んでいました。実際に出かけるとなると真剣に目的地のことを調べるので、日頃、いかに曖昧な知識のままだったのか痛感するのも散歩の計画を立てる時の試練と楽しさですね。

 

残念ながらその津軽鉄道は、十三湖よりはるか手前が終着駅です。さらに地図を拡大すると、今泉北口バス停が十三湖から300mほどのところにありました。

バス路線を追ってみると、五所川原バスターミナルから国道339号線の旧道沿いの街をつなぎながら十三湖よりもさらに北側の小泊まで走っていて、東側の山側にはいくつも溜池と思われる場所が続いています。

西側には岩木川を中心に両岸に水田地帯が開け、さらに海岸沿いの自然堤防と思われる小高い場所にも溜池がいくつも続いています。

 

多条並列灌漑水路を整理し、排水と共に水源を確保したのがこの溜池が並ぶ風景かもしれない。

バス路線はいくつもその溜池のすぐそばを通るようです。

 

 

五所川原ー小泊線を往復する*

 

五所川原バスターミナルはJR駅前にあります。広い待合室は、きっと冬の寒さや雪を凌げるようになっているのでしょうか。5月中旬、朝は11度でひんやりとしています。

ここから各地へのバス時刻表が壁に大きく表示されていましたが、漢数字で縦書きという懐かしい表示でした。窓口も開いていたので、今泉北口までの往復乗車券を購入しました。1780円でした。

昨日の五能線の帰宅時間の風景とは違って高校生が一人だけいましたが、別方面行きのバスに乗って行きました。

 

7時15分弘南バスのマイクロバスが到着し、私ともう一人を乗せて20分に出発しました。つがる総合病院などをぐるぐると回ったあと、旧道沿いに走り始めました。街中には自転車通学の高校生の姿がたくさんありました。

ところどころ、歩道に木柱があるのはガードレールがわりでしょうか。

 

行きは右側の座席に座り、水田地帯とは反対側の溜池を眺める予定です。

ただ後部座席は独占状態でしたから、左右どちらも眺め放題でした。

 

十三橋を渡ると開けた水田地帯の風景になり、岩木山のすそ野までよく見えるようになりました。田植え直後の水田に、岩木山が映っている風景です。

十三橋を流れているのが旧十三川で、五所川原駅の東側を流れている川です。駅の南2kmほどのところで十川と交差した水色の場所があり、おそらくここも昔の複雑な水路に関係した場所だろうと、時間と体力があれば訪ねたいと計画に入れたのですが今回は諦めました。どちらも岩木川の支流です。

 

バスの車窓から「永劫」と書かれた石碑が見えました。どんな歴史が記録されたものでしょうか。途中下車したくなりましたが、バスの本数が限られているので無理ですね。

 

右手に大きな溜池が見え、バスはすぐそばを走ります。ニノ沢溜池で、公園として整備されているようで美しい樹木と青い水面に白鷺の姿がありました。

じきにまた一つ溜池を過ぎると金木地区に入り、「龍飛まで60キロ」と表示がありました。直線距離だと50kmぐらいに見えるのですが、それでも青森は広いですね。

 

落ち着いた街の中をぐるぐると走り、斜陽館前を過ぎ、また田園風景になりました。

五月晴れの中、公園や森の緑と水田の水の青さが映えて美しい風景が続きます。

「水利」と読める何かの石碑がありました。

上ったり下ったり集落の間をバスは走ります。道端のお地蔵さんがまるで人形ケースのようなガラスの箱に立っています。冬は寒そうですね。

 

冷水バス停という由来が気になるバス停のそばには、保安林記念碑がありました。

左手が開けた場所に入り、定刻通り8時22分に今泉北口バス停に着きました。61のバス停を1時間で通過するのですから、すごいダイヤです。

 

前方にすでに十三湖の湖面が見えています。

8時を過ぎると日差しが暑く感じる中、湖に向かって歩きました。事前に見た航空写真では住宅も少なく人さびしそうに見えたのですが、交通量がある道です。狭い白線の内側をおそるおそる歩き、十三湖岸公園に入りました。

 

左手に「対岸」が見えるのですが、対岸ではなく国営十三湖干拓地が湖に迫り出した場所のようです。その向こうに岩木山がみえ、右手には長細く湖が続き、日本海との境に架けられた大きな橋まで見えました。

 

その日本海に接する砂洲でできた地域が、高校時代の日本史で習った記憶のある十三湊のようです。

一度訪ねてみたいと思っていた風景が目の前にあります。

きっと残された人生でもう二度と訪ねることはできないかもしれないと決死のような思いで家を出たのですが、もっと見てみたいことが次々と出てくるので困りましたね。

 

数分ほど十三湖岩木山を眺め、また今泉北口バス停に戻り、帰路のバスに乗りました。

豪雪地帯が2ヶ月ほどであっという間に田植えの季節になり、庭の草花が美しい集落を走ると、ほんとうに魔法の世界のようです。

どんな生活があるのでしょうか。雪や水との歴史をもう少し季節を変えて知りたいものです。

 

 

 

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