府中崖線は竹林や雑木林、そしてなだらかな場所は住宅地になって、御猟場道に沿って続いていました。
JR南武線はその崖の上におそらく切り通しになって通っているのだと思いますが、周囲は静かで鉄道の気配がありません。
左手の住宅地には水田が残っていて、御猟場道の遊歩道の途中にはその水田を眺められるような位置にベンチがあります。今度は田植えから稲穂が重くなるまでの季節にぜひここに座ってみたいものです。
「緑道・遊歩道案内図」がありました。昨年3月下旬に飛田給から押立の府中崖線を歩いた時にも見かけました。
御猟場道が終わるあたりで、かつてハケの上と下を結んでいたもう一つの坂道がありました。
清水坂(しみずざか)
切り通しの坂道であるこの坂は、昔、この道の両側から清水がこんこんとわき出ていたことに由来するといわれています。
坂道のある府中崖線(がいせん、俗にハケ)あたりは、地下水の作用による侵食谷(しんしょくこく)が発達しており、現在でも湧水を見ることができます。これらの湧水は、飲料水に利用されたり、また灌漑陽水としても重要な役割を果たしてきました。
ちなみに、清水坂の下水管理設工事の折、湧水が多く大変苦労した話が伝聞されています。
昭和六十年三月 府中市
今読み返しても「清水がこんこんと湧き出ていた」と「湧水」に心が踊るようです。
その水があの水田を生み出したのでしょうか。
御猟場道が終わるそのさきに右手が丘のようになった雑木林のような場所があり、真ん中に遊歩道が続いています。
ここが府中崖線本宿町緑地で、その入り口に「西府崖線の樹木マップ」「ハケって何?」「西府崖線/水と緑の回廊 ハケ・用水・湧水通信」などが貼られていて、地図でなんとなく選んだ場所だったけれどなんとすごい場所に誘(いざな)われたのだろうと思いました。
*市川緑道から西府町湧水へ*
府中崖線本宿緑地がいったん途切れるところに、案内図では鎌倉街道のようですが、片側2車線の都道18号が崖を貫通してハケ上とハケ下を結んでいました。崖線上にはマンションが建っています。
トンネル口からはひっきりなしに車が来るので、いったん迂回して歩道を渡り、今度は反対側の府中段丘本宿緑道へと向かいました。
連続した緑道かと思ったのですが、都道を境に名称も変わるようです。
右手は相変わらず高い場所が続き、お城の石垣のような場所の上に府中市立第五小学校があり、左手は広々とした平地にNECの敷地になりました。
ここからは石造りの水路の市川緑道が西へと続き、ゴミもない美しい水面を眺めながら歩くと、崖線沿いに休憩所の東家も整備されていました。
「市川緑道」の案内図がありました。
1. 西府町湧水
府中崖線から湧き出ている、市内で常時見られる貴重な湧水です。
府中市はかつて、崖線から湧き出す湧水が良質で豊富な土地でしたが、現在、湧出はここ一か所になっています。
2. 市川緑道
多摩川の水や沿線の湧水を集めて流れる市川沿いに整備された緑道で、崖線の深い緑からは、絶えず野鳥の鳴き声が聞こえてきます。
府中市の水と緑のネットワークづくりとして、府中用水を市川緑道の流れに接続する工事が平成19年3月末に完了しました。
この先に湧水があるようです。
左手は新しい住宅街でしょうか、崖線と住宅の間にある水路のそばを歩くと鴨がのんびりと泳いでいる場所があり、水音が聞こえてきました。
ハケ上への階段があり、その紅葉の残る崖の斜面から水が滲み出るように湧き出ていました。
湧水がある風景。
水を求めていた時代はほんの少し前まであったのだと、しばらくその水音に聴き入りました。
御猟場道からここまで1kmほどだというのに、なんとも変化に富んだ崖線下の美しい風景でした。
そしてところどころにある案内板で、その歴史や地理を学ぶことができました。
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