水のあれこれ 343 「漸く」

備前渠用水路の年表を読んでいた時に、Wikipediaに書かれている1828年(文政11)の用水路の復旧について「漸く取り入れ口の復旧が開始される」という一文でつまづきました。

 

「漸く」はなんと読むのでしょう。

難しい字でもなく「漸次」で日常的に目にしていたのに読めない、しかもさんずいなのはなぜだろうと。

本当に日本語は難しいですね。

 

検索したら案外と読み方が知られていなさそうな説明が多かったことに安心しました。

 

そしてそのものずばり「意外と知らない『漸く』の読み方と言葉の語源」(@DIME アットダイム)という記事を読んで、なるほどと思いました。

 

「漸く」とは?

「漸く」は書き言葉として使うケースが多く、初めて見たときは読み方に悩む人が多い漢字です。さんずいに斬るという形からも、読み方や意味を想像しにくいといえるでしょう。まずは、漸くの意味や読み方について解説します。

 

「漸く」の意味は「やっと」「かろうじて」

漸くは、「ようやく」と読みます。一般の会話表現で使われるときは、「やっと」「なんとか」と表現されることが多いことでしょう。畏まった場面や関係性では使われることもありますが、聞く機会があまりなかった人もいるかもしれません。

漸くには、「かろうじて」という意味もあります。かろうじては漢字で「辛うじて」と書き、達成が難しく辛いことをどうにかやり遂げたという意味です。

「漸く」は時間経過や労力の意味合いが強い言葉ですが、かろうじてにはそれ以外の意味もあります。かろうじてはギリギリの点数で試験に合格したときや、危ない状況をすんでのところで逃げ切ったような場面でも使われる言葉です。

 

 

*なぜ「漸く」はさんずいなのか*

 

なぜ「さんずい」なのか、興味深い説明がありました。

 

「漸く」の語源は「水を斬る」

漸くに使われている「漸」の字には、いくつかの由来があります。水を意味するさんずいと「斬る」を組み合わせた漢字であることから、水の流れを変えて(斬って)導いていく様子を語源とする説があるようです。

そのほか、昔中国にあった「漸(漸水)」という川の名前が由来とする説もあります。川の名前から、少しずつ進んでいく意味が生まれたようです。川の流れや、川が広がっていく過程に関係しているのかもしれません。

漸には、水が染み込むという意味もあります。一説によると、「漸」の成り立ちは「車を作る際に木を切る様子」です。切った木材に水がゆっくりと染み込むところから、「次第に」という意味が生まれとする説もあります。

 

 

「川の流れや、川が広がっていく過程に関係しているのかもしれません」

大地の表面を定まることなく水が流れ、そして川になり大河になり海へと流れていく様子を昔から観察し続けてできた言葉でしょうか。

「昔」とは何千年もの昔から。

ちょっと気が遠くなりました。

 

私が「漸次」という言葉を知ったのは、点滴量を少しずつ減らしていくといった使い方だったような記憶があるのですが、この場合は「ようやく」というよりは「だんだんに」という意味合いですね。

 

散歩をするようになって、ふだんはその由来を考えることもなくきてしまった言葉や漢字に立ち止まる機会が増えました。

 

 

 

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