院内助産とは 9 <日本産婦人科医会の資料の紹介>

おさママさんのコメントで、日本産婦人科医会が出した資料をご紹介くださいました。http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120712/1342045829#c1342183490
ありがとうございます。




助産師主導分娩システムにおける助産師と産科医の連携について」
 日本産婦人科医会 幹事、葛飾赤十字産院 副院長  鈴木俊治氏
 日本産婦人科医会記者懇談会 (平成24年7月11日)


http://www.jaog.or.jp/know/kisyakon/56_120711.pdf


この資料は、1ページ目にあるように「(医師の立ち会わない)助産師主導の分娩」を「助産師主導分娩システム」として、病院・診療所に勤務する助産師による「院内助産システム」だけでなく、葛飾赤十字病院が地域の周産期センターとして連携している開業助産師による助産所・自宅分娩あるいはオープンシステムの分娩も含めた内容になっています。


細かい内容に関してはもう少し私自身がよく読んだ上で今後の記事の中でも書いていきたいと思います。


資料の中には「自立した助産師」のモデルとして助産師の間では紹介されることの多いオランダの周産期医療について書かれています。
特に6ページ目の以下の部分が大事ではないかと思います。


「初産・経産婦別の助産師主導から産科医主導への移行」の表の中には、1988年から2004年までの各移行率と理由が書かれています。

初産婦の移行率:51%→63.3%
分娩の進行不良や胎児機能不全(胎児仮死)のための移行例が増えてきた

経産婦の移行率:28.1%→40.4%
帝王切開既往妊婦の分娩や母体合併症、胎児機能不全(胎児仮死)のための移行例が増えてきた

そして「助産師主導の一時ケアから産科医の二次ケアに移行する理由」では以下のように書かれています。

オランダでは医療訴訟が一般的でないことから、Defensive Medecineとしての傾向ではなく、グローバルな意味で、分娩が医療を必要としてきていると評価される

「グローバルな意味で、分娩が医療を必要としてきている」
そういう意味では、日本は早期から医療施設での分娩を達成できたのだと、つくづく思います。
そして平均して出産後数日間を安心して入院できる施設数と財源が確保された恵まれた状況であるということですね。


もしオランダがこれから医療施設での分娩へ移行するとなると、産科施設の増設、産科医や医療スタッフの不足という問題を抱えることになるのかもしれません。
当分は、集約化された分娩施設で出産したら即退院というシステムを財源的にも取り入れざるを得なくなるのではないでしょうか。


「グローバルな意味で、分娩が医療を必要としてきている」
そうして築かれてきた日本の周産期医療を、「助産師の自立」とか「助産師のやりがい」といった感情的な理由から後戻りさせることは本当に社会のためになるのでしょうか。
失ってから気付くのでは遅すぎるのだと思います。
「産科医がいつも出産に立ち会ってくれた古きよき時代」にさせてしまってはいけないと、私は思います。





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