医療介入とは 34 <分娩台と分娩室>

妊娠中の母親学級あるいは両親学級で、院内見学として分娩室の見学を組み込んでいる施設が多いでのはないかと思います。


初めての妊婦さんだと、やはり分娩室を見ると緊張されるようです。
「えー、手術室みたい」「怖いなぁ」「あの台で産むのですか?」などなど。
私の勤務先では、側臥位などは必要な時には対応していますが、基本的に分娩台の出産です。


アトム分娩台(手術台兼用)
http://www.atomed.co.jp/product/cat_obstetrics/detail/121


この写真を見れば、緊張もしますね。
右上に掲載されている手術台兼用ではない分娩台だとしても、周囲の様々な医療機器が緊張感をもたらすのだと思います。


1990年代初頭の日本の経済はまだまだ上向きになると信じていた頃には、病院でも患者さんや産婦さんの快適性(アメニティ)重視の設計を取り入れて改築するようになりました。


産科でも、それまで陣痛室から分娩室に移動して出産していたのが一般的でしたが、陣痛(Labor)、分娩(Delivery)、回復あるは産褥期(Recovery)まで移動が必要のない一つの部屋で過ごすLDRを取り入れるところが多くなりました。


また、LDRだけでなく分娩室も医療機器などがふだんはあまり目に付かないような室内のデザインを取り入れて、緊張感を少なくするような工夫がされるようになりました。


ちょっと申し訳ないのですが、日赤の周産母子センターを参考にさせてください。
http://www.med.jrc.or.jp/hospital/clinic/sanka/index.html


現在の新築の分娩室をみると、ホテル仕様のような豪華さでびっくりです。
以前の日赤の分娩棟は、たしか広いフロアーにカーテンで仕切っただけで分娩台が何台も並んでいた写真を見た記憶があります。


産科だけでなく、他の病棟やあるいは介護の場も同様かと思います。
80年代頃までは、昔建てられたつくりのままで8人部屋の大部屋というところもありました。
最近は個室も選択できるし、大部屋でも各ベッド間の距離を確保して、カーテンではなく棚で仕切ることでプライバシーを保つ工夫や家具調のデザインで生活感も感じられるように工夫されています。


80年代の病院だと、大部屋のベッド間にあるカーテンは睡眠時か処置時に閉めるだけでした。
カーテンを引いて一人になりたくても、看護師さんに元気よく「カーテンは開けておきましょう」とシャーっと開けられてしまったものです。
看護教育の中でも患者さんの状態を観察することが最優先でしたから、プライバシーもない時代でした。


ここ20年ほどで、緊張感をできるだけ少なくして入院中のおひとりおひとりの生活の場という視点が、医療や介護の場で取り入れられるようになりました。


それはあの急激な経済成長のおかげだったわけですが。


たしかに、患者さんを観察しやすいようにとか、処置しやすいようにという医療側の都合はあります。
ただ、そこにはやはり安全対策というたくさんの物語が積み重ねられているのだと思います。


もう少し、分娩台と分娩室について続けます。