助産師と自然療法そして「お手当て」24  <助産師と整体、整体協会について>

私自身は肩こりとも無縁で、また他人にマッサージなどで体を触れられることは苦手なので、整体やマッサージの世界はよく知りませんでした。


ただ、助産師の世界には骨盤ベルトや骨盤ケア、べびぃ整体など整体という言葉を耳にする機会が多いのでだいぶ前から気にはなっていました。


実際に問題だと感じたのは、「助産院は安全?」で産後長期間にわたって安静臥床をさせている場合があることを読んだことと、身近でも自宅分娩の際に生まれた直後の新生児を逆さづりにしている助産師がいることを直接聞いたことがきっかけでした。


調べてみると整体というのは手技療法の総称的な使い方で、カイロプラクティックオステオパシーのように海外の療法も含まれているようで、いまひとつ全体像がつかめない印象です。


<社団法人整体協会>


整体協会という団体があるようです。
その活動理念を引用します。

社団法人整体協会は、昭和31年、故野口晴哉(はるちか)氏によって設立され、文部科学省(旧文部省)から認可を受けた体育団体です。
本来、体育が目指す体力発揚とは、実生活の場で溌剌と自らの能力を発揮することに外なりません。我々が体力発揚の基礎と考えている「体を整える」ということを本当に追求するには、広い視野に立って自らの生活を見つめ直すことが必要です。


当協会は、生命の自発性に即した生活を提唱しています。生命の自発性を理解し、またそれに支えられて、自らの心と体を悠々とつかいこなして生活すること、ここに整体協会の主張する体育の基本的な姿勢があります。そうすることによってのみ、自らの生を十全に生きることができるのであります。
(強調は引用者による)

整体協会のHPの「野口晴哉について」というページには、整体を「体育」と位置づけた協会設立までの経緯がもう少し詳しく書かれています。

 日本治療師会の評議委員を務め、大日本連合治療師会の創設にも寄与。そして治療理念の確立、諸療術の体系化を図る「整体操法」をまとめあげ、昭和二十二年には整体操法の指導者養成機関として『整体操法協会』を設立。昭和二十年代後半には身体を通じた人間の個性研究とも言える「体癖論」の基礎を完成させた。
 この頃から、病を治すことよりも人間本来の力を引き出して健康に導く自らの活動を「体育」と位置づけ、「治療」を捨てることを決意。何かに頼ることなく自らの足で立つことを指導理念にあげ、昭和三十一年、そうした健康観に基づく体育団体『社団法人整体協会』を文部科学省(旧文部省)の認定を受けて設立。
(強調は引用者による)


「治療を捨てることを決意」


整体は「治療」ではなく「体育」と位置づける。
昭和二十二年とありますから、この背景には、こちらの記事で書いたように、医業とその周辺の医業類似行為が法律で明確にされたという時代背景があると推測できます。


GHQからは「非科学的で不潔である」とされたあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師に関しては法的に医業類似行為とされたのに対し、治療師として活動してきた野口氏の整体は医業類似行為としての法的保護も得られなかったということでしょうか。


野口晴哉氏は、「治療」を捨てたのか。
「何かに頼ることなく自らの足で立つことを指導理念に掲げ」とは、何を意味しているのか。
そして助産師への影響はどのように広がっていったのか。
次回は、野口晴哉氏の著書から見ていこうと思います。




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