新生児のあれこれ 2 <爪>

私は、生まれたての赤ちゃんたちの爪を切ることが大好きです。


勤務に入るとまずは新生児をひとりひとり見てまわって、「爪の長い子はいねがー」と目星をつけておきます。
あ、こわいですね、なんだか。


生まれたばかりの新生児で、まだ爪が切られていない赤ちゃんがいると嬉々として切りはじめます。


出生後すぐに爪を切った赤ちゃんでも、2〜3日たつともう白い部分が目立ち始めます。


そういう赤ちゃんをぎゅっと抱きしめて、そっと手を開かせてチョキッチョキッとしている時間はなんて豊かな時間なのだろうと思うのです。
赤ちゃんたちは、ちょっと迷惑そうですが。


<手の爪と足の爪>


35,36週ぐらいになると新生児の爪は十分に発達して生まれてくることを、こちらの記事のおまけで書きました。


手の爪は、指先から2,3mmぐらい越えて生えています。
生え際が爪の重みに耐え切れなくなるのか、一部切れ始めていることもあります。


羊水の中では柔らかかった爪も、外気にふれて生後2〜3時間もするとだいぶ乾燥して固くなります。
私はそうして固くなってからはさみできるのですが、まるで切り取り線にそって封を切るかのようにはさみをつかわずに爪をむしっていくスタッフもいます。


現代は赤ちゃん用の小さな爪きりが手に入るけれど、昔はたしかにそうやって新生児の爪を「むしって」いたのかもしれません。
昔の人たちは、どうやって新生児や赤ちゃんの爪を切っていたのでしょうか。


手の爪と同じく、足の爪も案外長く伸びています。
ちいさなちいさなしじみ貝のような爪が足の指先にちょこんと乗っているのは、本当に愛らしいものです。


手の指と違うところは、足の場合、爪の部分が指先に深く食い込んでいるかのように凹んでいることかもしれません。
爪の部分を、プレス機で押し付けたかのようです。
そしてその先が1,2mmほど浮いているのですが、凹んだ部分の深さがある分、爪が指の先端を越えていることはあまりありません。


足の指の爪は、たまに切ってあげたほうがいいかなと思う赤ちゃんがいる程度で、入院中は切る必要がないことがほとんどです。


いつ頃から皆さん赤ちゃんの足の爪を切るのだろうと気になって、経産婦さんたちに質問してみたことがあるのですが、案外記憶にないようです。


3ヶ月ごろかなぁ、という答えが多かった印象です。


手の爪は生後数日でも切りなおす必要があるほど伸び方が早いのですが、足の爪はゆっくりです。
その差はなにかと考えた時に、発達の早い部分だからかなと思いつきました。


新生児でも指の動きは活発で、日に日にその動きの精度が高くなっていきます。
それに比べて足の指の動きはそれほどではありません。


3ヶ月。
ちょうど足の裏をしっかり地面につけて、足の指を使って体を動かし始める時期です。
そんなことも関係があるのでしょうか。


まぁ、忘れちゃったということが大きいでしょうけれど。



<爪が指先をこえる>


生まれたばかりの新生児に対面して、お母さんやお父さんたちがよく気づくことにこの新生児の爪の長さがあります。


「こんなに爪が伸びているんですね!」と。


おおよその印象ですが、9割以上の方から言われるように思います。


例の「成熟徴候」を説明していたのですが、それは単に「医学的モデル」にすぎない私自身のとらえかただったのかもしれないと思うようになりました。


お母さん達は説明を求めているというより、赤ちゃんを観察しありのままを表現したのだと。


ですから最近は、「よく気づきましたね」「よく赤ちゃんを観ていらっしゃいますね」と言うようにしています。
新生児も、人に観察してもらう、アンテナを向けてもらうための「装置」とでもいうのでしょうか。爪が指先を越えているのは、そのために備えられているのかもしれないと。


そして、爪を切るというのは、お母さん達にとってはとても怖いことです。
でも、どんどん伸びるので切らずにはいられません。
新生児の爪というのは、人に世話をしてもらうために備えられた何かなのかもしれないと思うこの頃です。




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