紙おむつのトリビア

紙おむつの歴史がわかるおもしろいサイトを見つけました。


一般社団法人 日本衛生材料工業連合会の「年表 紙おむつの歴史」です。


<紙おむつが誕生した時代>


最初は綿不足から布おむつが作れなくなり、紙おむつが1940年代に考案され1950年に誕生したそうです。
へぇーですね。


日本では、

昭和20年代後半、初めて紙おむつ発売。紙綿を重ね布で包んだだけ。外出時や雨で選択できない時などに限って使用される程度でした。

とあります。


その後すぐに紙おむつへの開発につながったのではないようです。

1962(昭和37)年 紙おむつより一足早く乳幼児用ライナー発売。当時は電気洗濯機が普及しつつある時期でしたが、おむつは下洗いをして便を取り除いてから洗濯機に入れるという手間が必要でした。そこで重宝だったのが、布おむつの内側に敷く紙綿製のライナーでした。

当時の電気洗濯機といえば、脱水は洗濯物を手回しのハンドルで挟んで搾る方法だったと思います。
小学生の頃、使った記憶があります。


「紙綿製のライナー」は、くみ取り式のトイレに捨てやすかったのかもしれません。昭和37年に下水道局が作られて、ようやく日本でも下水でし尿処理が行われるように整備が始まった頃ですから、ほとんどの家庭がくみ取り式トイレだった時代です。


そして1963(昭和38)年に初めて紙おむつが発売されたようです。

1963(昭和38)年、今日の紙おむつの構造と機能を持った最初の本格的紙おむつが発売されました。おむつカバーと併用するフラット型で10枚入りで380円でした。発売の翌年、日本航空の国際線常備品に採用されました。


昭和38年の物価を調べていたら、どこから出しているのかはわからないのですが、おもしろい資料がありました。


1963(昭和38)年、大学卒の初任給が18930円、タバコ1箱30円、新聞購読月390円とあります。
紙おむつ10枚が新聞購読料に等しい額ですから、今の感覚なら3〜4000円という感じでしょうか。10枚で・・・。


その資料の「昭和37年」には、「石炭から石油へ『エネルギー革命』急進」というタイトルがあります。


そういえば1960年代終わり頃に通った小学校は、まだ石炭ストーブでした。


エネルギーが石炭から石油に変る時代だったのですね。その時代に、国際線に乗るというのはとても誇りだったのでしょう。あのツルのマークのバッグを持っていることは「飛行機に乗った」証のように使われていました。


紙おむつが発売された当時は、それを使うことはあの鶴のバッグを持っていることと同じく社会的ステータスのような雰囲気があったのでしょうか?


いずれにしても「庶民」の手に届く金額になるのはもっと後、たぶん1980年代に入ってからではなかったかと記憶しています。


<布おむつから紙おむつへ>


私が助産師になった1980年代終わりには、病院では布オムツを使うけれど退院したら紙おむつも使うというお母さんが多かったように思います。それでも全部を紙おむつにするには経済的に大変なので併用するという感じでした。


布オムツから紙おむつに急激に変ったのが1990年代だったと思います。
病院でも紙おむつを取り入れるところが一般的になりました。


「普段は紙おむつを使うけれど、育児に慣れてきたら布オムツをつかってみたい」と、お母さんたちのおむつへの考え方や準備も変りました。
「布おむつのやり方を教えてください」と質問されることが多くなったのも、1990年代に入ってからでした。
成型おむつが話題になったのも1990年代に入ってからと記憶しています。


紙おむつが一般的になると、紙おむつに対する批判的な見方もあれこれとありました。
紙おむつを使ったほうが便利だし生活上は必要だけれど、「なんだか罪悪感」を感じさせる空気がつきまとっているのかもしれません、現在に至るまで。


そのあたりの答えは、上記サイトの「幼児用紙おむつ編 身体生理のQ&A」が参考になることでしょう。


<大人の紙おむつ>


「年表 紙おむつの歴史」を見て、興味深いのが乳幼児用の紙おむつの開発と少し時期をずらして成人用の紙おむつが改良・開発されていることです。


1970年代終わり、看護学校入学前の春休みを利用して特別養護老人ホームにお手伝いに行きました。


おむつ交換や食事介助は簡単そうで実はとても技術と相手の観察を必要とすることなので、お手伝いの私たちにはさせてもらえませんでした。
もっぱらお掃除と洗濯物たたみでした。大量の布おむつもありました。


一日が終わって帰宅すると、服には独特の消毒薬のにおいが染み付いていました。大量のおむつをたたんだだけですが。


あの頃に比べると、今の高齢者の施設は独特のにおいがしなくなったような気がします。その理由のひとつが、紙おむつを取り入れたことにあるのではないかと思えるのですが、真偽のほどはわかりません。


1980年代、看護師として働き始めましたが、ちょうど高齢化社会の始まりの時代でした。入院患者さんの多くは70代から80代でした。
20代、30代の患者さんが入院すると、「若い!」と珍しく思えるほどでした。


おむつの必要な患者さんも多かったのですが、当時はフラットの紙おむつしかなくそれさえも高価でした。半分に切って使ったり、布おむつを併用したりしていました。


1990年代以降は、病院や介護施設で使う大人用の紙おむつもどんどんと改良され、そして低価格になりました。


高齢者におむつを使用することへの批判もいろいろあります。
おむつをはずせる方はできるだけはずせるようにすることも大事な場合もあると思います。


最近、私の高齢の親が入院する必要が多くなり、自ら「紙おむつを買ってきて」ということがありました。
間に合わなくて下着から服まで着替えるよりも、質の良い紙パンツをはいているほうが精神的な負担も少ないし、かえって日常生活行動の範囲が広がるようです。


ヒトは生まれてから死ぬときまで、おむつが必要なのですね。





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