産後ケアとは何か 3  <産後ケア施設に関する法律>

産後ケアとは、何をさすのか。
いつまで、誰によるケアを指すのでしょうか?


前回の記事で紹介した、横浜市「横浜市産後ケア推進要綱」の定義を再掲します。

産後ケア
産後3日以降に、医療機関において、通常実施が予定されるじょく婦および新生児に対する保健医療的ケアをいう。


あくまでも「早期産後ケア」という事業内の定義ですから「産後3日以降」と書かれているのだと思いますが、大事なことは「保健医療的ケア」が必要な時期であるということだと思います。


入院に限らず「保健医療的ケア」が必要な期間というのは、おおよそ産後1ヶ月であるというのがこれまでの産科関係者の認識だったと思っています。


産後1ヶ月以内には、母体側は子宮復古不全による出血や産褥熱、あるいは産褥精神障害の可能性など医療を必要とする状況が起こりますから、退院後も1ヶ月健診までは出産した施設で対応するのが一般的です。


新生児は定義が生後28日未満とされているように、およそ1ヶ月までの間は胎外生活に適応していく期間として医療的な見守りが必要な時期です。
黄疸の増強、体重増加不良、あるいは先天性疾患の早期発見・早期治療にも重要な時期です。


宿泊型の産後ケアセンターというのは、退院直後から1ヶ月以内の母子の利用を想定している場合が多いと思いますが、こうした保健医療的ケアを必要とする時期の施設を建設するには、法律はどのようになっているのでしょうか?


<産後ケアセンター桜新町の開設>


産後ケアセンターの先駆け的な施設として話題になった、東京都世田谷区にある武蔵野大学付属産後ケアセンター桜新町の開設の経緯が、全国助産師教育協議会のニュースレター「助産師教育」(No.63 2009.5.25)に書かれています。


その一部を紹介します。

 当事業は全国初であり、この施設を計画するのに根拠法がないため、事業の構想を練っていく過程は試行錯誤の連続であったと当時の世田谷区の担当者は語っていました。結局、児童福祉法に制定されている子育て短期支援事業に準じ、建築基準法では児童福祉施設に準じ、消防法上ではケア付き宿泊に分類され、あわせて旅館業法による旅館業の届け出や飲食店営業届け出を行い、当事業を開設することとなりました。

助産学教育を担当する立場からは、医療法に準じる助産所の届け出ができないことが残念でした。


助産所の届出ができないことよりも、産後1ヶ月以内の母子にとっては「保健医療ケア」という視点が大事ではないかと思うので、産後ケアセンターは医療法に基づくことが望ましいのではないかと私は思います。


現在の産後ケア施設は、医療法に基づく助産所での産褥入院と、医療法に規定されていない施設が存在することになります。


そのどちらも「助産師が産後ケア」をすると謳っていますが、医療施設でない施設の助産師による産後ケアは「医療」なのでしょうか、そうでないのでしょうかという素朴な疑問が出てきます。


もういちど、医療法による助産所の規定を見直してみようと思います。




「産後ケアとは何か」まとめはこちら