産後ケアとは何か 18 <「産褥入院」−宿泊型ケア施設の利用>

今まで2〜3人ですが、私の勤務先のクリニックを退院後に宿泊型ケア施設の産褥入院を利用する相談を受けたことがあります。


どの方も30代後半の初産婦さんでした。


退院後に自宅での手伝いがないことが理由の方と、退院時にちょうど夫の転勤に伴って引越しの時期が重なってしまったために避難先を探している方でした。



助産所などいくつか産褥入院をしている施設があったので、本当に助かりました。


ただ、問題点もいくつかありました。


いくつか選択肢にあげた施設は、「自然出産」「母乳育児」を強く前面に出していることでした。


もちろんそれを望んでいる方には問題がないのですが、私の勤務先のクリニックを出産場所として選んだ30代の方はほとんどが「無痛分娩」を希望されてきているのです。


また、入院中も少しずつ赤ちゃんとの生活のペースに慣れていけばよいという方針ですから、基本的には自律授乳ですがミルクも使います。


退院の頃にはだいぶ赤ちゃんとの生活に慣れていましたし、私達もできるだけ手を出しすぎずに見守るぐらいで大丈夫なくらいになっています。
けれども夫と二人だけで赤ちゃんの世話をするまでに、もうワンクッション、休養できる場が欲しいという方々でした。


ですからこうした方々が宿泊型ケア施設に求めることは、保健指導よりもむしろ自宅に近い感覚で、自分のやり方で赤ちゃんの生活を始められるための家事援助ではないかと思います。


こうした方々が「自然分娩」「母乳育児」を掲げた施設に移った時に、その価値観の違いに気持ちが揺らぐことがないように説明が必要でした。


<宿泊型ケア施設と連携するために>


現在、こうした産褥入院を掲げている施設を利用する際には、その方の自由意志ですから、出産した産院は関わることはありません。


けれども産後1ヶ月までの継続性を考えた時に、その母子の分娩・産後の状況を出産した産院から情報提供できるとよいかもしれません。


特に出産や授乳方法の選択や産婦さんの受け止め方、出産した産院でどのように具体的にアドバイスしているのかなど、一貫性を持って関われることは大事だと思います。


ですから宿泊型ケア施設を運営する側の方針があるのも自由といえば自由なのですが、お母さん達の選択やそれまでの産院で創り上げた生活のペースを最大限尊重していただけるような門戸の広さが求められるように思います。


また、マクロビオティックや骨盤ケアといった根拠も明確でないものを勧めている施設もあり、それに対する考え方を事前に説明することにもけっこう気を使いました。


標準的な産褥入院施設には、代替療法を組み込まないようにして欲しいと思います。


そのあたり、まずは助産師側が「産後ケア」とは何か、何が求められているのか、明確にしていく必要があるのではないでしょうか。





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