産後ケアとは何か 8 <「昔はよかった」のか、昔とはいつか>

都内に新しくできた「とよくら産後ケアハウス」の<産後ケアハウスって何?>には以下のように書かれています。

昔から産後は十分な休養をとることとされていました。
「産後の肥立ち」「床上げ」といった言葉は妊娠・出産を機に大きく変化したからだを、ゆっくり時間をかけて回復させていく大切さを伝えています。
出産後ゆっくりと妊娠前の状態に戻る女性のからだには、床を敷いたままねたり、起きたり、赤ちゃんの世話だけで過ごす時間が必要なのです。


この主旨はよいと思います。
こちらの記事で、母親の周囲の支援の大切さとしてダナ・ラファエル氏の本の一部を紹介しました。

まだギリシアにいた頃、女性の親戚や近所の人が「ドゥーラ」として新しい、母親の家を訪ね、皿洗いを手伝ったり子どもをお風呂に入れたりし、赤ちゃんがふっくらとしてかわいいなどと言って母親を元気付ける習慣があったのです。

それまで呼び名のなかったこの支援を、ダナ・ラファエル氏がドゥーラと名づけたのです。


冒頭の文章で、一点気になるのが「昔から」の一言です。


昔っていつのことなのでしょうか?
昔から、日本では本当に産後の女性は大切にされてきたのでしょうか?


<「昔」とはいつの時代か>


以前にも、「昔とはいつの時代か?」と問いかけました。


こちらの記事では、「昔の産婆さんのお産は自然で良かったのか。昔とはいつの時代か」と問いました。
そしてそれに続いてこちらの記事では、「『畳の上』『家族に見守られ』『自宅に産婆さんが赴き』『自宅でリラックスして』本当に昔の女性は出産していたのか?」という内容の記事を書いています。


その後者の記事では昭和初期の産褥期について、「出産の文化人類学」(松岡悦子著、海鳴社、1985年)の聞き語り部分を紹介しました。再掲します。

でも人によってはね、お産して一週間しか寝てない人もいましたよ。一週間過ぎたらもう立ち上がって、一人前にみんなと一緒に働いていましたもん。

今から70〜80年前の日本です。


昭和初期の同じ頃、北海道の開拓産婆が「食事はご飯と塩・味噌のみ。副食物は血にさわる」といった誤った習慣の改善に取り組んだり、信州の産婆が産後も訪問し、食事の指導や過ごし方を指導し10年かけて変えていったことの資料を紹介しました。


「産後は十分な休息をとる」
それが社会の中で当たり前のこととなったのはいつ頃からなのでしょうか?


そのあたりをもう少し考えてみようと思います。




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