乳児用ミルクのあれこれ 5 <ウォーターサーバーの安全性>

昨日の記事にrenyankoさんがくださったコメントの中で、ウォーターサーバーのお湯を使って調乳をしている分娩施設があることを知りました。
renyankoさん、ありがとうございます。


「液状乳児用ミルクを望んでいます」(2012年5月13日)の中で以下のように書きました。

気になるのは、塩素が含まれて消毒されている水道水に比べ、ミネラルウォーターやウォーターサーバーの水の中での雑菌の繁殖はどうなのだろうかという点です。


東日本大震災、そして原発事故の後、水の確保の必要性からウォーターサーバーを取り入れている施設や家庭が増えたのではないかと思います。
開封のタンクで水をいくつか保管してあるだけで当面はなんとかなるからです。
私の勤務先でも取り入れました。


ただし、調乳にはまだ使用していません。あくまでも成人の飲用水として設置しました。
ざっと調べてみても、上記の疑問の答えになるような公的機関からの検査報告が2012年の段階では見つからなかったからです。


今回、renyankoさんからいただいたコメントで久しぶりにウォーターサーバーについて検索してみたところ、今年3月に東京都が行った調査報告が公開されていたのでご紹介します。

ウォーターサーバーの安全性に関する調査
東京都生活文化局消費生活部  平成25年3月

16ページの「表9 一般細菌検査」を見ると、5つの商品について温水の状態では細菌は検出されていませんが、冷水の状態では1つは開封直後には細菌が検出され、もうひとつは開封後しばらくしてから徐々に細菌が増えています。


大腸菌群は未検出でしたが、未開封であっても一般細菌が検出される事情については以下のように説明されています。

水道水や飲用水以外の製造基準である原水では一般細菌が検査項目に含まれているが、製品であるミネラルウォーター等の成分規格には一般細菌は含まれていない。そのため、ウォーターサーバーのボトルも同様に食品衛生法では一般細菌については対象といえない。

ペットボトルのように飲み切ることが前提の商品に比べて、ウォーターサーバーの水は開封後2〜3日そのままということはよくあるのではないかと思います。
しかもタンク自体が室温の中に置きっぱなしになります。


よく「水が腐る」といいますが、要は細菌やカビの繁殖です。
開封の商品にもその細菌が存在する可能性に加えて、開封後の状態によっては外部の雑菌が混入する機会があります。
タンクとの接続部が清潔でなければそこからも雑菌がはいるでしょうし、タンク内の水を使用するたびに外部の空気が入ります。


温水では細菌が検出されなかったのは、80から90℃近くに加温する過程で死滅させられているということでしょうか。


調査をふまえて東京都生活文化局では以下のように注意喚起をしています。

一般細菌の存在は、通常であれば影響は少ないが、高齢者や幼児など抵抗力の弱い人に冷水を飲ませる際には、気をつける必要があると思われる。

特に粉ミルクの調乳の際には、熱いミルクにウォーターサーバーの冷水を入れるような利用方法は避けるべきと考えられる。
2007年にWHO(世界保健期間)から出されたガイドラインでは、粉ミルク中の菌による感染症を防ぐために必ず70℃以上の煮沸した湯で調乳し、その後は瓶を冷水等にあてて冷却することが求められている。粉ミルクの製造時業者によっては冷却の際、外部からの冷却だけでなく、湯冷ましや自社の専用ペットボトルの水を入れて温度を調査することも選択肢として例示している製品もあるが、いずれにせよウォーターサーバーの冷水を直接入れる方法はWHOのガイドラインや粉ミルクの調乳方法には含まれていない。


さらに災害時に停電がおこれば、加熱させる機能も止まります。
備蓄としてのウォーターサーバーの水は、開封後一度に、たとえば1日以内に使い切るようにするなど、塩素を含んだ水道水を溜めて使う場合よりさらに短期間を目処にしたほうがよさそうです。


そしてこの調査を読む限りは、日本小児科学会が災害時に「お湯が用意できないときには衛生な水で粉ミルクを溶かす」と書いていても、それはウォーターサーバーの水はやめたほうがよいと考えたほうがよさそうです。


いずれにしても、ウォーターサーバーは衛生的のように見えるけれどもまだまだ十分に実態調査がされているわけではないということがわかりました。




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