新生児のあれこれ 42 <新生児のおなか>

新生児や乳児のゲップや吐く、あるいはそりかえるなども異常ではなく腸蠕動に伴うもので、「溢れてくる(溢乳)」胃結腸反射とのタイミングで説明できるのではないかということを前回の記事まで書いてきました。



それでもまだ、不安にさせる表現が残っています。
「過飲症候群の症状」の中の「飲みすぎて苦しい」や「腹部膨満(ぼうまん)」です。
特に哺乳瓶で授乳しているお母さんたちは、「哺乳瓶は簡単に飲めてしまうから飲みすぎているのではないか」という不安が常にあることでしょう。


「哺乳瓶は簡単に飲めてしまう」かどうかは、「経産婦さんの赤ちゃん・・・哺乳瓶のような飲み方」に書いたように、母乳を直接飲む場合でも経産婦さんの赤ちゃんは哺乳瓶のように飲んでいることを書きました。


今回は、何を「腹部膨満」とするのか。
そのあたりを考えてみようと思います。


<新生児の腹囲測定はしていない>


母子手帳の出生時の記録を見ていただくとわかりますが、通常、身長・体重・頭囲・胸囲の4項目を測定します。
メジャーを使って計測するのは基本的にこの4項目で、腹囲を測定することはありません。


小児科や新生児の医学書を見ても、上記の測定方法や平均値は掲載されていても腹囲に関しては載っていません。
計測されたデーターがないといえるでしょう。
つまり、新生児のお腹が「大きい」とか「異常に張っている」などは、「視診」つまり目で観察したものでの判断なのです。


胸囲は測定するのに、なぜ腹囲は測定しないのだろう。
正直なところ今まで考えたことがなかったのですが、少し古い文献ですが、参考になることが「小児科学新生児学テキスト 全面改訂第3版」(診断と治療社、2000年)に書かれていました。

学校の身体計測では、胸囲、坐高も測定する。胸囲は胸隔の発育程度の指標であり坐高は脊椎の状態を考えるうえで重要である。

原文でも強調された字体になっていますし、「胸郭」ではなく「胸隔」になっています。
胸囲を測定する必要性について以下のように説明されています。

胸囲は、胸腔内の臓器(心臓や肺)や胸筋、女子では乳腺の成熟を反映するが、出生時には頭囲とほぼ同じであり、その後は胸囲のほうが大きくなる。胸囲は、後天的な要因(特に運動による肺活量や胸筋の発達)により大きくすることができる。

それに対して、腹囲に関しては全く記述がありません。
出生後からの連続した成長・発達の指標として、腹囲は意味がないデーターというのが現時点の考え方なのかもしれません。


新生児のおなかの変化もまた、案外まだまだ観察されていない部分ではないかと思います。


ですから見た目でお腹が大きければ、「飲ませすぎ」あるいは「ゲップのさせかたが足りない」とされやすかったり、お腹が大きい上にしょっちゅういきんで育つ様子を「飲みすぎて苦しそう」と判断されやすいのかもしれません。


次回はそのあたりをもう少し考えてみようと思います。





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