助産師の世界と妄想 6  <全体像が見えない新生児訪問>

思い込みの強い代替療法や医療への忌避感を強めやすいさまざまな民間療法的なものや食事療法が助産所で積極的に取り入れられていることの問題点は、今までも書いてきました。


助産所に通うことになるきっかけは、多くの方はご自分で調べ、選択し、それなりの経済的負担も納得されたうえで訪れるのではないかと思います。
もちろん、まさかそこまで・・・と驚かれた方もいらっしゃることでしょうが。



ところが、自治体から派遣される新生児訪問の場合は、どうでしょうか?



さとえさんのコメントに書かれているように、どのような助産師が訪問してくるのか受ける側にはわかりませんし、助産師を選択する余地もありません。



また、通常は1回のみの訪問ですから、お母さんの知りたいことや不安とはまったく別の、その助産師の信じる方法だけを聞かされて終わる可能性があります。



<新生児訪問に関わっている助産師>


私も7年ほど、病院・診療所の勤務のかたわら自治体の新生児訪問をしていたことがあります。



それまでも自分が勤務している施設で出産された方を、自主的に退院後に訪問していたので訪問自体は慣れていましたが、他施設で出産されたさまざまなバックグラウンドのお母さんと赤ちゃんにお会いする機会は、勉強にもなりましたし楽しいものでした。


その自治体では30人ぐらいの助産師が、新生児訪問指導員として登録されていたのでしょうか。


他の指導員と会う機会はほとんどなかったのですが、たまに研修で一堂に会して自己紹介をしたときに、病院・診療所で働きながら新生児訪問をしている助産師はほとんどいなくて、育児中に保健センターの訪問事業や健診などのアルバイト的な仕事を続けている助産師が大多数でした。


それはそれで経験を積む機会にはなると思いますが、気になったのは母乳相談や代替療法などですでに開業している人や、そういうところとつながりの深い助産師が多い印象だったことでした。


あるいはその助産師自身、自分の出産が自宅や助産所だったという方もちらほらいて、助産師同士といっても同じ土俵ではないことを感じました。



<全国でどれくらいの助産師がどのように関わっているのか>


全国の自治体でどれくらいの助産師が実際にどのように新生児訪問に携わっているのだろうと、ずっと気になっているのですが、その全体像がわかるような資料を未だに見つけられずにいます。


助産師基礎教育テキスト第3巻 周産期における医療の質と安全」(日本看護協会出版会、2009年)の中では、「地域における助産サービス管理の実際」という中で新生児訪問が述べられています。

助産師の地域における活動内容もまた多様である。子育て支援では、行政の新生児訪問・全戸訪問(赤ちゃん事業)、出産準備教育、育児支援サロン等の担当、企業が主催する出産準備教育や育児支援活動の担当、助産師同士がグループで企画している育児サロン等への参加などが挙げられている。性(生)教育関係では、小中学校・高等学校の養護教諭や保護者会からの依頼で実施していることが多い。これらの業務委託の受け方も、所属する助産師会が調整している場合もあれば、助産師個人として請け負っている場合もある。個人として請け負っている場合は、助産師同士の連携がないことが多い。

私は保健センターから依頼されたので「個人で請け負う」ケースだったのですが、近隣の自治体では「助産師会に入会した助産師でなければ訪問事業に参加できない」話も聞いたことがあります。


「土俵が違う」と感じた雰囲気はこのあたりから来ているのかもしれません。


上記の助産師教育テキストにも、こうした訪問事業に携わる助産師数やその経歴などの全体像について詳細は書かれていませんでした。


でも助産師の思い込みと妄想が広がる機会として、この新生児訪問はもう少し見直しが必要ではないかと思います。


そんなわけでしばらく、この新生児訪問についての記事が続きます。





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