記憶についてのあれこれ 54 <ハヤトウリ>

先日の「妄想ニホン料理」のテーマは福神漬けで、中国のコックさんがハヤトウリを使おうとして店になかった場面がありました。


「あ、なつかしい!ハヤトウリだ」と、また回想の世界へ。


東南アジアで1年ほどホームステイさせてもらった時に、一緒に市場へ行くのが楽しみでした。
私が見たこともない野菜がたくさんあったり、あるいはその植物を知っていても「そんな調理法をするなんて」と驚きの連続でした。


そのなかでも、よく家庭で使われていたのが「ハヤトウリ」でした。


現地での呼び名は忘れてしまいましたが、帰国してからたまに店頭でみかけることがあってハヤトウリという名前である事を知り、また日本名があって国内でも使っている地域があることを知ったのでした。


「隼人瓜」の由来がWikipediaで説明されています。

日本では最初に鹿児島に渡ったため隼人の瓜ということでハヤトウリという名前になった。


ということは、中国から伝わったのではなく, ゴーヤのように東南アジアから沖縄、そして鹿児島へと海をこえてやってきたのでしょうか。
あの大海を小舟にのって行き来していた人たちの手によって。


想像しただけでもわくわくするのですが、「旬の野菜百科」にもう少し詳しい時代が書かれていました。

日本には1917(大正6)年に最初に鹿児島に持ち込まれ栽培が広まったため、薩摩隼人の瓜ということでハヤトウリと呼ばれるようになりました。


あ、ちょっと残念。
国境のない時代に漂海民と呼ばれる人たちの手によって渡って来たのかと期待したのですが、案外最近のことなのですね。
それでも持ち込まれた年が明確に記録されているという事は、その当時の資料があるのでしょうか。
ハヤトウリが日本に広がった歴史をもう少し知ってみたくなります。


妄想ニホン料理」の中では、中国のコックさんが「仏の手に乗っているから『仏手瓜』という」と説明していました。
もし中国から渡ってきていれば、「隼人瓜」ではなく「仏手瓜」のまま広がったのではないかと想像するのですが、どこからきたのでしょうね。



この隼人瓜の食感は冬瓜よりは大根に近い歯ごたえで、でも大根ほどの味はなく淡白で冬瓜のように何にでも使えます。
私が暮らした地域では、スープや炒め物の中に入れていました。


Wikipediaの説明に「洋ナシ型の果実は中央に大型の種子を一個生じ、発芽まで果肉と種子が分離しない」とあります。
つまり、普通に野菜として使う時には、丸ごと全てを調理できるということです。
あの真ん中の部分が「大きな種」であったということを、このWikipediaを読んで初めて知ったほどです。


便利な野菜だと思うのですが、ほとんど都内ではみかけないので残念です。
「旬の野菜百科」では「最もおいしい食べごろの旬は10月中旬から11月にかけての秋になります」とありますが、東南アジアのような熱帯の国では通年食べられる野菜ですから、日本の気候では収穫の時期が限定されるのかもしれません。


ゴーヤのように、もう少し手軽に食べられるとうれしいなと思っています。



<おまけ>


野菜や果物について書いた記事がたまってきたので小まとめです。

「カシューナッツ」
「海をこえてやってきた野菜」
「野菜と果物」
「野菜でもあり果物でもあり」
「ココナッツ」
「野菜と香辛」


「記憶についてのあれこれ」まとめはこちら