アドバンス助産師とは 4 <一人前を認証する意味はあるのか>

前回の記事で週刊医学界新聞のインタビュー記事に、アドバンス助産師の位置づけについて以下のように書かれていることを紹介しました。


今回、認証するレベル3は、責任を持って自律的に助産ケアを提供し、院内助産システムに従事できるだけの実践能力をもつ"一人前の助産"レベルという位置づけです。


具体的に「一人前」のレベルが続けて説明されています。

分娩介助数100例以上、新生児の健康診査100例以上、妊娠期・産褥期の健康診査200例以上などの実践例数や研修の受講など、いくつかの条件が設定されています。就業環境にも左右されますが、おおよそ7年程度の助産師経験年数を想定しており、認証を受けた助産師の呼称は「アドバンス助産師」です。


「一人前」と聞くと、社会的には「独り立ちした」というニュアンスでしょうか。


こちらの記事で紹介したように、「ベナーの看護論」では「一人前」は具体的に以下のレベルであり、そのうえに「中堅」「達人」となっていきます。

この段階は同じまたは類似した状況で2〜3年ぐらい仕事をした看護師があてはまる。一人前の看護師は直面した状況を整理し、問題を分析し、ある程度の予測をもとに計画したり行動したりするこができる。一人前の看護師は、一通りの経験を持っているため、看護の場面での統率力はあるし、問題対処能力・管理能力も持っているが、中堅看護師のような柔軟性やスピードといった面は欠けている。


新卒から2年ほどの基本的な臨床実践をへて、そのあと同じ勤務場所で2〜3年働くことで、まあだいたい一人で判断できるようになるレベルといったところです。


<「一人前」のレベルを認証する意味はあるか>


この「一人前かどうか」を意識するのが、中途採用のスタッフに対してではないかと思います。


総合病院でも診療所でも、多くの中途採用者がいます。
履歴書を見るとおおよそのレベルはイメージできますが、冒頭のような「分娩介助経験数」だけではなんとも言えないなというところに難しさがあります。


卒後2年ぐらいで分娩介助数100ぐらいあるけれどその後長い間、助産業務から離れていた人と、同じ分娩介助数でも数年間産科病棟で勤務して経験を積んで来た人では、後者の方が「一人前」として即戦力になりますし、オリエンテーションもそのレベルに合わせたものになります。


あるいは臨床経験はトータル数年から10年ぐらいあっても、1、2年毎に職場を変わっている人であればたとえ分娩介助数はそこそこあっても、受け入れ側には不安があります。
「同じまたは類似した状況で2〜3年ぐらい」継続して働くというのは、その施設で「一人前」と認められる大事な要素でもあります。


たとえ中堅でも達人でも、職場を変わればまた新しい業務に慣れるまでは新人なのですから。


「アドバンス助産師」という肩書きが履歴書に加えられても、やはりその人自身の実力を測るのには、どこでどれだけの経験を積んで来たか以外にはないように思います。


「一人前」を認証する意味はあるのでしょうか?


やはりこのシステムは、ただ助産所を開業したり院内助産で働くために箔を付けるために利用されていくのではないかと不安が残ります。
本当の実践力とは何か、実態のないままに。




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