アドバンス助産師とは 3 <読めば読むほどわからない「助産師像」>

医学書院の「週刊医学界新聞 第3118号」(2015年3月23日)に、「今こそ、助産師像を描く必要がある」というインタビュー記事があります。


「『助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)』レベル3認証制度の開始迫る」というサブタイトルで日本看護協会常任理事の福井トシ子氏が、今回の認証制度について説明しています。
「同制度の準備の中心を担ってきた」方のようです。


<「助産師のキャリア開発にもかかわる取り組みの経緯」>


福井氏は経緯について以下のように答えています。

2003-4年ごろから、産科医と助産師の恊働によって、安心・安全に出産できる体制を作ろうという意識が高まってきました。産科医の不足が指摘される中、産科医と役割分担を図り、助産師が主導となって行う院内助産所助産師外来の普及が社会的に叫ばれるようになったのです


こういう現場の感覚とは違うことをもっともらしく社会に言えることが「権力をもつ立場」というものなのではないかと、つくづく思うこのごろです。


2004年ごろの「産科崩壊」と言われた時期(それは今も続いているのですが)に、「院内助産助産師に正常なお産を任せろ」と言い出した人たちがいることへの驚きについては、「院内助産という言葉の矛盾」に書きました。


当時のことは、機に乗じて「開業権を死守する」助産師の政治的な姿勢と私は受け止めました。


<「助産師の不安」「助産師の能力」へのすり替え>


院内助産については2000年代にはその言葉が広がり始めていましたが、産科医不足を追い風にしても、2012年の時点でも全国で「院内助産」と掲げている施設は82カ所(日本経済新聞、2015年6月7日の記事)だそうです。


2014年度はそれよりも増えたのでしょうか?増えていたら、きっと新聞記事でも多い方の数字をアピールするのではないかとは思いますが。


冒頭のインタビュー記事で、福井氏は「(院内助産の)この動きはスムーズには進んでいない」とし、その理由を以下のように説明しています。

当初こそ、その原因は現場の医師や病院側の管理職からの抵抗感にあると考えられがちでしたが、それは違いました。現場の助産師たちの話を聞いていくと、むしろ助産師側から聞こえる「自信がない」という声のほうが断然大きくて、助産師が抱える不安が根本的な理由であるとわかってきた。つまりローリスクの正常妊娠・正常分娩という基本的な助産ケアについて、自信を持って実践できる助産師が少ないという実態が浮き彫りになったのです


え?それは当たり前だと思います。
「自信」って何でしょうか?
私だっていまだに、お産が無事に終了するまでは「何が起きるかわからない」不安に緊張しますし、お母さん赤ちゃんの安全を守りながら、さらに妊婦さんやご家族の快適性や満足感にも十分に配慮できたのだろうかと試行錯誤の毎日です。


「自信をもって分娩介助する」そんな助産師像こそが、幻想なのではないでしょうか。


<「院内助産師認証制度」にすればよいのでは?>


このインタビュー記事を読んで、初めてこの認証制度がイメージする「助産師像」がわかりました。
こう明言されています。

今回、認証するレベル3は、責任を持って自律的に助産ケアを提供し、院内助産システムに従事できるだけの実践能力を持つ"一人前の助産師レベル"という位置づけです。

なんだ、それならそうはっきりわかるように「院内助産師認証制度」にすればよいのにと思います。
つまり、「院内助産システム」で正常なお産だけに関わりたい助産師が「最低限クリアしなければいけないレベル」の認証に。


そのあたりをうやむやにして全ての助産師向けの認証制度のようにアピールするから、現場は混乱しているのだと思います。



それにしても「アドバンス助産師」と誰かに認証してもらうと、自信につながるのでしょうか。


特に「暫定処置として2015・16年に限り、1助産学担当教員(産科臨床経験5年以上の助産師)、2看護管理者(臨床経験10年以上、うち産科臨床経験5年以上の助産師)、3助産所開設者(開業届けを出している助産師)からの申請にも対応する」対象の皆さんのように、お産の現場から離れている方々は。


「隗より始めよ」


現場の助産師が分娩介助に不安をもったり自信がないこと理解するためには、自ら分娩介助をしてみることではないでしょうか。
助産師像を描く必要があるのなら、まずはそこからではないでしょうか。




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