赤ちゃんに優しいとは 16 ヘルメット治療って?

1ヶ月ほど前だったでしょうか、東京都看護協会から学習会のお知らせが来ました。

タイトルは「コロナ禍での育児支援を学ぼう 〜ママと赤ちゃんの笑顔を増やそう〜」でした。

 

講師の名前は、母子の骨格のゆがみの予防と改善のための理論と技術を啓発・普及することに関する事業で、2002年に設立された団体の主催者です。

2002年といえば、助産師の世界では自然療法が肯定的に広がり始めた時期でした。

 

さて、今回の研修の内容はこんな感じ。

 ・赤ちゃんのポジショニングの取り方

・向き癖の直し方を含めた関わり方、遊び方(ヘルメット治療って?)

・赤ちゃんの心地よい抱っこやあやし方

・あやし方がわからない新人看護師や新米ママへのアドバイスや遊び方等

 

この内容で「コロナ禍での育児支援」なのかという東京都看護協会への疑問と、まだ「からだのゆがみ」とか「あたまのゆがみ」という自説に一生懸命な助産師がいるのかと驚きました。

 

*ヘルメット治療って?*

 

小児にヘルメットを使用する必要がある場合というのは限定的で、ヘルメットを着用することで頭部の打撲や外傷を防ぐのが目的という認識でした。

ところがヘルメットが治療になる場合があるのでしょうか。検索してみました。

 

わあ、本当に「ヘルメット治療法」があるのですね。「赤ちゃんの頭のゆがみを改善する治療法」として、小児科医のサイトがいくつかあります。

今までの代替療法を勧める医師とは違って、現代医療を否定するような内容とも違いますし、錚々たるとでもいうような経歴の方もいます。

ヘルメット治療は赤ちゃんの頭の形に合わせたオーダーメイドのヘルメットを長時間赤ちゃんにかぶせることで、頭のゆがみの改善を期待する治療法です。1970年代にアメリカの医師が頭のゆがみを持つ我が子にヘルメット治療を行ったことが始まりだと言われています。以降、欧米を中心として多くの治療用ヘルメットが開発され、今では世界中の頭のゆがみを持つ赤ちゃんに対して行われている治療法です。

「聞いたことがなかったけれど新しい方法なのか」と思わず信じそうになりました。

 

 

まあ、この10年ほどでだいぶこういう話に鍛えられました。

1980年代ごろから「扁平な頭にしないためにうつぶせ寝」が流行りましたね。女の子は髪の毛で隠せるからともかく、男の子は中学生になると坊主頭にさせられる日本では、心を痛めることも多かったのでしょう。あっという間に広がった印象です。

ところがその代償は赤ちゃんの死という大きなものでした。

その後、赤ちゃんの頭の歪みは自然と矯正されていくこと、脳実質や精神運動発達に影響しないので赤ちゃんの寝かせ方を気にしなくて良いというあたりまでが、2009年ごろには標準的な、そして安全な考え方になったと認識していました。

その経緯から考えても、腑に落ちない「治療法」でした。

 

さて日本の場合、小児の治療費は原則無料ですが、この場合どうなるのだろうと他のクリニックを見てみたところ約58万円で、「診察や検査で病気が発見された場合は、健康保険が適応されることがあります」と書かれていました。

自費診療で、「病気以前の状態」なのでしょうか。

であれば、なんのためなのでしょう。

 

効果が認められれば、標準医療になるという、代替療法的なものとの大まかな見分け方からしても腑に落ちない「治療」ですね。

 

赤ちゃんの気持ちも、そしてこうした代替療法的なものが赤ちゃんへ与える影響も誰にもわからないですから、またこうして「からだ」「ゆがみ」に注目した商売が繰り返されるのでしょうか。

 

 

 

 

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