記憶についてのあれこれ 31 <分煙や禁煙の時代への変化>

私自身は幸いにしてタバコを吸う人がいない中で育ちました。
そのためか、子どものころから、20mぐらい先でタバコを吸っている人がいてもそのにおいを敏感に察知していました。


花タバコの記事で「1985年のたばこ専売法廃止に伴って」という一文から、1970年代から現在に至るまでのたばこに関する記憶がいろいろと蘇ってきたのでした。


1970年代はまだ中学生から高校生の時代でしたが、住んでいたのは地方でしたからそれほど住宅も人口も密集していなかったためか、たばこの臭いに悩まされた記憶はありませんでした。


唯一の記憶と言えば、学校の職員室がもくもくとけむりに包まれていたことです。「受動喫煙」という言葉もない時代でした。
職員室に用事があるとできるだけ息をとめて用事をすませ、逃げるように出て行きました。
わずか30〜40年ほど前は、学校の先生もそんな程度の認識しかない時代だったのですね。


<1980年代の記憶>


1980年代というのは禁煙や分煙という言葉が浸透する前の時代でした。


新幹線や在来線の特急では、どの車輌内でも喫煙できるように灰皿まで設置されていました。
目的地に着くまでは逃げ出すわけにはいかず、けむりが漂う中に坐るしかありませんでしたが、本当によく耐えていたと思います。
大人だけでなく、小さい子ども達には拷問のような空間です。


交通機関の喫煙規制では次のように書かれています。

1980年に列車内の禁煙化を求める嫌煙権訴訟が起こされたのちに日本でも禁煙車設置が進むようになり、1990年代以降は概ね優等列車全車両の半数〜70%が禁煙化された。

こうした取り組みは、私鉄のほうが旧国鉄やJRに比べていつも早かったですね。
私が時々利用していた私鉄の特急は、1980年代終りから90年代初めには全車両禁煙になった記憶があります。JRはまだ、喫煙車輌があったりデッキでの喫煙を許可していましたから、非喫煙者にはあまり変化がないものでした。


ただ、私鉄もしばらくは灰皿のついた車輌がそのまま使われていたので、ヤニ臭い旅行はしばらくありました。


<1990年代、「公共の場所での喫煙」という概念の広がり>


普通列車だけでなく特急も禁煙化が進んでも、ホームではまだどこでも喫煙が可能でした。
駅に停車してドアが開くたびに煙を吸い込んでいたのですから、よく耐えていたと思います。


まず私鉄がホームでの分煙、そして全面禁煙と動きました。
実施されたのは何年だったのか、検索しているのですがちょっと見つかりません。
でも1990年代前半だったような記憶があります。


そしてようやくJRもホームでの分煙に動いたのですが、駅によって喫煙場所がまちまちでした。
せっかく煙をさけて端の車輌に乗り込んだのに、他の駅ではその車輌が停車する場所が喫煙場になっていたりしていました。


それでもわずか10年ほどで公共交通機関での分煙や禁煙が徹底され、喫煙者・非喫煙者ともに認識が大きく変わったのがこのあたりの時代だったのかもしれません。


<医療従事者と女性の喫煙>


こうした分煙・禁煙の社会の動きに反比例するかのように、1990年代は女性の喫煙率が上がっていきました。
特に女性看護師の喫煙率の増加を憂慮して、日本看護協会が2003年に看護職とたばこという文書を出しました。


1998(平成10)年の成人女性の喫煙率が13.4%であるのに対して、女性看護師はなんと24.5%と倍の喫煙率です。(p.4)
その「33.7%は職場では吸っていません」とありますが、反対にいえば7割近い人が職場でも吸っていたことになります。


1990年代に勤務したある総合病院の看護師用の休憩室は、紫煙とヤニでひどいものでした。産科病棟で新生児がいるにも関わらずです。
やんわりと「私は煙草の煙が苦手」「新生児もいるし」「白衣に匂いがついて、そのまま患者さんのところにいくのは・・・」と注意をしても、止める人はいませんでした。


2000年代に入って、病院内でも分煙あるいは禁煙という時代になり、ようやく休憩室での煙草の臭いや受動喫煙から解放されたのでした。





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