哺乳瓶のあれこれ 17 「ショウヘイの人工哺乳」

5月23日の「東京ズーネット」で、多摩動物園で生まれたアムールトラ「ショウヘイ」の公開が始まるニュースがありました。

「ショウヘイ」が生まれた時の状況は「アムールトラ『シズカ』の出産、そして生まれた子『ショウヘイ』の人工哺乳」(2019年4月22日)の中で詳細が書かれています。

 

2019年1月19日にシズカから3頭が生まれ、3番目がショウヘイでした。

翌日夕方、シズカの意識が子どもから離れるようになり、産室内を確認したところ、生まれたのは3頭。しかし、1頭はすでに死亡しており、1頭は虫の息でした。もう1頭だけは元気な声をあげて動いています。体力はまだあるようです。すぐ私は麻袋を敷いた段ボールを用意し、3頭を入れて病院へと走りました。

 

一刻の猶予もならない緊急事態です。私と病院係長の2人で、生きている2頭をお腹に直接当てるように抱え、体温で温めました。1時間後に哺乳したところ、鳴き声をあげていた子(オス)は元気を取り戻してミルクを飲みました。ところが、虫の息だったメスの子はミルクも飲まず、体調も思うように回復せず、残念ながら翌朝死亡してしまいました。 

 

ヒトの出生直後から24時間ぐらいの、あの「なかなか飲まない」「なかなか吸い付かない」新生児の様子と重なります。

 

ショウヘイの出生時からの体重の変化の記録はありませんが、生後2ヶ月ほどたった4月10日には10kgになり、人工哺乳と合わせて馬肉や鶏の頭のミンチ250gを食べるほどに成長していたようです。

 

写真に写っていたショウヘイが使っていた哺乳瓶は、ヒトでも馴染みのあるデザインでした。

飲み方も、時々、ふにゃふにゃと甘噛みのような感じでくわえてみたり、ペッと吐き出してみたり、ヒトの新生児に似ています。

そして日齢とともに集中して飲むようになっていく様子も。

 

動物園で哺乳瓶が使われるようになったのはいつ頃からか、どんな試行錯誤があったのか、その歴史を知りたくなりました。

 

 

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